9月8日創作論講義(稲井)
本日の創作論講義 「シナリオと映像の違いって何だろう?」
講師/伊藤裕彰さん(シナリオ作家)・micoさん・福田隆久さん
◇
今回の創作論講義は、「シナリオと映像の違いって何だろう?」というテーマの下、ほぼ全編が、講師の伊藤裕彰監督と二人の役者さん・福田隆久さんとmikoさんによる撮影現場の見学、という形になりました。
素材となるシナリオには、筆者が提出した、「ディセント~明日のために」という作品を選んでいただきました。しかし、初めて書いたものを使っていただくということを噛み締めている間もなく、筆者にとっては、まさに自らの未熟さを認めざるを得ない時間となりました。その主な理由は、以下の通りです。
まず、台詞の多くが「話し言葉」ではなく、「書き言葉」になっていたこと、そして、会話のキャッチボールが成立しにくい箇所があったことです。そのため現場では、シナリオのニュアンスを極力失わせることなく、台詞の一部を自然で話し易い言葉に置き換え、同時に、会話として不自然ではない位置に並べ換えるという作業が必要となりました。そのことで、監督と役者さんに大きな負担をかけてしまうという結果になったと思います。
もう一つは、人物設定の甘さです。とりわけ女性の役は、シナリオ全編を通じて、講義で取り上げられたワンシーンのみの出演なのですが、主人公のキャラクターや苦悩を浮かび上がらせるという重要な役割を担っています。それにもかかわらず、筆者は「彼女」に関する種々の情報や、主人公との接点をシナリオの中に織り込むことができませんでした。そのため、監督と役者さんが、女性役の方の演技プランを考えるための「裏設定」を作ることになりました。これもまた、不完全なシナリオが現場に混乱を引き起こすことの「好例」になってしまったように思います。
筆者個人にとって、今回の講義が、非常に強く印象に残ったことは言うまでもありません。撮影が進み、演じてくださったお二人の芝居が熱を帯びて来るに従い、自分が紡いだ筈の言葉によって、自分自身の身が切られていくような気がしました。この日の気持ちを忘れず、これからも精進して参りたいと思います。
末筆ながら、筆者の初めてのシナリオを映像にまで昇華させてくださった、伊藤監督と福田隆久さん、mikoさんは、筆者にとって忘れられない存在になりました。
本当にありがとうございました。
稲井(第53期基礎科昼間部)
2009年4月、基礎科昼間部受講。
渡辺千明先生・高橋留美先生の指導の下、シナリオを勉強中。