2008.8.20

8月20日研修科夜間部(糸柳)

ジャッキー・チェンを語り合おう!

 

われわれ1970年代後半に生まれた男性諸君にとって、割礼のような共通体験が三つある。

 

それは、キン肉マン、長渕剛、ジャッキー・チェン。

 

いずれも好き、嫌いは別にして、30代前半の男性諸君なら、小学校で一日に一度はその言葉を聞かない日はなかっただろう。そして、中には、ガキ大将にキン肉バスターをかけられたり、長渕キックをお見舞いされて、保健室経由、病院行きというフルコースをたどった人もあるに違いない。
この三つのキャラクターの中で、ボクがいまだに好きなのがジャッキー・チェンだ。

 

こんなことがあった。ボクがまだ20代前半、今より体型が8kgばかりスリムだった頃、ボクにもかつて「彼女」というものがいた。その彼女にジャッキーの魅力をとうとうと語ったことがあった。
『サンダーアーム/龍兄虎弟』で九死に一生を得た彼はまさに不死鳥を体現した存在であり、石丸博也でない日本語吹替版は考えられず、日本版主題歌が収録されていない『クレージーモンキー/笑拳』『カンニングモンキー/天中拳』などはタコの入ってないタコ焼に等しいと嘆いた。
最初は彼女も楽しそうに聞いていたものだが、そのうち、こんな話ばかりする彼氏に対してキレた。

 

そして、こんなことを言った。「あんたは寝ても覚めてもジャッキーの話しかしないのね。たまには他の話もしなさいよ」と。すると、ボクはこう答えた。
「分かったよ。これからはもうちょっとユン・ピョウの話もすることにするよ」

 

以来、彼女とは会っていない(というより、会ってくれなくなった)。
さて、ボクが何を言いたいかというと、今、ボクは寂しい思いをしている。

 

それは、今度のクラスでは、ジャッキーの話を語り合える仲間が一人もいないということだ。というより、そんな話をして、受け入れてくれるような雰囲気ではない。第一、みんな、映画をそれほど観ていない。
映画があまりお好きではないようだ。それなら、なぜシナリオライターになどなろうとしているのだろう?
ボクにはそこのところがよく分からない。
手前ミソでひじょうに恐縮だが、映画学校に通っている頃は、こんなものではなかった。

 

クラスの誰か一人が映画を観に行って「面白い」と口にすれば、周りの奴らはこぞってその真偽を確かめに行ったものである。それぐらいみんな映画が好きで好きで仕方なかった。

 

ボクたちシナリオライターを目指す人間は、そうしたどうしようもなく映画好きな人たちに勝ち抜いていかなきゃならない。なのに、映画がそれほど好きでないというのなら、みんなは何を武器にしてシナリオの世界に足を踏み込もうというのだろうか?
このクラスで過ごせる時間も残りわずか。今さらこんなことを嘆いても仕方がないとは思うのだが、もう少し映画好きな同志とめぐり会いたかった。そして、お互いに意見を闘わせて、もっといっぱい刺激を受けたかった。残念で仕方がないと思う今日この頃だ。

 

ところで、話は元に戻るが、その後、ボクも年とともに場をわきまえることを覚え、誰にでもジャッキーの話をふっかけるようなマネはしなくなった。
そりゃそうだろう。同じ過ちをくり返すのはごめんだ。
今度彼女ができた時には、うまくやっていく自信がある。
今度彼女ができたら、なるべくサモ・ハン・キンポーの話もしてみようと思う。

 

執筆/糸柳 (第50期研修科夜間部)
長崎県出身。日本映画学校映像科卒。
シナリオ講座は今回が初受講。いつも講師の目の前の席に座っている。