7月12日創作論講義
67期基礎科夜間部、二人目の方の高橋です。
個人的に思い入れのある7月12日の授業の話をします。
ゲストは丸内敏治先生、
タイトルは「未精算の過去」というものでした。
先生は学生運動での逮捕、服役という前歴をお持ちで
こうした体験を踏まえた幻のデビュー・シナリオ
『イエスタデイ』のお話によって講義が始まりました。
大きく広がるほどに、当初の目的と乖離していく社会運動の挫折。
とある事件をきっかけに止まっていた時間が動き出すというお話に聞き入りつつ、
実はこれ、先生のお仕事の一つ『われに撃つ用意あり READY TO SHOOT』 に通じる話だよなあと密かに興奮しておりました。
事前に宿題として出された映画『エンゼル・ハート』は、
こうした過去の発見→逆転のプロセスという
多くの物語に採用されている骨法を最もダイレクトに伝える映画です。
先生は傍証として『トータル・リコール』、『オールド・ボーイ』、
クリント・イーストウッドの『許されざる者』『グラン・トリノ』 へと連想を広げていきます。
そこから『クロスロード』へと流れていくあたりはぞくぞくするものがありました。
『エンゼル・ハート』は原作からして
ジャズ文化隆盛の50年代アメリカへのオマージュを主眼とするものでしたが、
映画は舞台をニューヨークからニューオリンズへと居を移し、
ブードゥーの魔術的なモチーフを視覚化することでより土着化させたものでした。
それは『エンゼル・ハート』と同時代の空気を吸っている
『クロスロード』と繋がったからでした
(それにしても全共闘世代は本当にジャズが好きなんだなあ!)。
丸内先生の創作論講義はとりとめもない話に思えて、
シナリオ作りに一番重要と思われる、
個人的なわだかまりを発想につなげること、 そこからいかに想像を広げていくか、のプロセスを体感させるものでした。
さて、シナリオ作りの技術面ではどういう話があったかというと・・・
それは内緒にしときましょう。
ひとつだけ言えることは、参考図書は木下順二著『“劇的”とは』 。
明日観る映画、読む本を見つけること 物書きにとっての学びとはこれに尽きると改めて思うのでした。