6月6日基礎科昼間部(相木)
突然ですが、『いわもとQ』なる蕎麦屋さんをご存じでしょうか?
“ありえないお店を目指す店”という微妙な文句を掲げる看板や、何を狙っているのか掴めないネーミングセンスに一瞬、引き気味になるが、実は「リーズナブルな値段で本格的な味が楽しめる」と通の間では有名な、知る人ぞ知る名店なのである。
僕は赤坂にあるそんな『いわもとQ』へ一度は行ってみたい、と常々恋焦がれていた。
憧れの店が立ち食い蕎麦屋というセコさに我ながら泣けてくるが、好運にも赤坂のシナリオ講座に通う運びとなり、来店するタイミングを窺っていたのだが…。
と、そんなどうでもいい話はさておき、授業の話である。
今回は前回に引き続き、鈴木智先生による受講生が提出した企画書(1時間モノ)の講評だ。
先生はプロットを一読し、順番に丁寧にアドバイスを述べられていく。
ポンポン出る映画や小説の具体例や先生なりのアイディアは毎回、圧巻の一言。
その博覧強記の知識ぶりに、自らの浅学ぶりを思い知らされる次第である。
手塚治虫が若人に残した、「出来うる限り、一流のものに触れなさい」というアドバイスが身に沁みる今日この頃。
それに他の受講生の方々の企画書の講評を聴いているだけでも、得るものは実に多い。
先生のプロの視点もさることながら、自身の企画書に対する受講生の方々の意見もバラエティに富んで大変参考になる。
逆に意見を述べる行為もまた然り、だ。
ちなみに僕の手掛けているプロットは、戦時中を舞台にしたオカルトもの。
前回提出の段階では、「こういう人物がいました」的な人物紹介で止まっており、今回は先生の意見を参考に、自分なりにドラマの流れを造ったつもりで提出。
とはいえ、直前までは、なぜか『特攻大作戦』(67)のノリでアクション風に考えており、突如、トランス状態から正気に戻り、なんとかマトモな形に整えた即席改訂版である。
しかし、「コレはコレで意外といいかも…」と密かにほくそ笑んでいたのだが、先生や他の受講生の方々の鋭い突っ込みに、適当ぶりがボロボロ露見。
まだまだストーリーとしての形が整っておらず、再考の厳命が下った。
当たり前の結果である。
あまつさえ自信をもっていた数分前の自分に、飛び蹴りをかましたいぐらいである。
シナリオ執筆に至るまでは、一体どれほどの道のりとなるのか。
先を思えば途方に暮れるが、それでも亀の歩みで進んでいると思いたい。
いつかガメラのように回転して、宙に飛び立つ日を夢見て。
そんな落ち込んだ心を励ます目的で、帰りに念願の『いわもとQ』に寄ることを思いつく。
が、ところがどっこい、ここでショッキングな事実が発覚する。
あろうことか『いわもとQ』は、閉店していたのだ。
なんという運命のいたずらか。
閉店日が4月27日という、講座に通い始めた頃に行けば間に合った事実が余計に悔しい。
あまりに辛辣な神の仕打ちにしばし空を仰いだが、これも「褒美にはまだまだ早い」という天のお達しなのかもしれない。いや、きっとそうだ。
改めてシナリオの勉強に真面目に取り組もうと、決意を新たにした次第である。
ありがとう、『いわもとQ』。君の名前は忘れない。一口も食べてないけど。
まあ、『いわもとQ』はチェーン店で他にも新宿、麹町、池袋にお店があるんだけどね。