2009.5.7

5月7日基礎科夜間部(六助)

しとしとと降る雨の中、赤坂のシナリオ会館に向かう。気のせいかも知れないが、講座の日には狙ったように雨が降ることが多いような気がする。開講式の日も雨だったし。

 

基礎科は、火曜日がゲストの先生を招いての創作論講義、木曜日が専任講師の先生による基礎講座なのだけれども、今週はゴールデンウィークで特別に火曜日が休講だったため、今日は1週間ぶりの講義ということになる。今回は「人物設定」がテーマで、担当は岡先生。

 

・シナリオの中心となるものは人物の行動とセリフ。

・人物の性格をストックするために、街行く人々を観察してカード化するやり方がある。ライターによっては見知らぬ人を尾行まですることもある。

・主人公には作者自身が投影されていることが多いが、葛藤を作るためにシナリオには主人公と反対の要素を持つ人物が必要。そのような人物のキャラ作りのためには、自分の好みでない人、性格の合わない人とも付き合って研究することが必要。

・主人公は受け身ではダメ。能動的にアクションを起こすこと。

・シナリオは、状況を先に考える場合と人物を先に考える場合とがある。状況を先に考える場合は、その状況にうまく導けるような人物設定を考えていく。

・主人公は複数より1人に絞った方が良い。

・シナリオは「誰が」「何を」する話なのかが明確になっているようにすると良い(抽象的な言葉を入れないで60字程度にまとめる)。その「誰が」にあたるものが主人公。

・主人公は、魅力的で、感情移入を誘うような人物でなければならない。

・主人公以外の人物は、すぐに覚えられるような特徴を持っているのが良い。

・小説の登場人物には、単純に性格づけられる扁平人物と、複雑な性格を持ち立体的に描写される円球人物の別がある。主人公は円球人物。映画の場合は半円の人物もある。

・人物に奥行きを出すために、各人物が生まれてから現在に至るまでの経歴を7~8ページ程度箇条書きで書き連ねてみるやり方がある。

・シド・フィールドが挙げている良い登場人物の持つ4要素。
 1. 考え方・ものの見方
 2. 態度・ふるまい
 3. 劇的欲求
 4. 変化

 

以上のようなことが、『Shall we ダンス?』の分析を交えながら解説された。
講義中に、先生から受講生に『Shall we ダンス?』の「誰が」「何を」をノートに書いてみるよう指示が出たのだが、残念ながら私は時間内に書ききれなかった。
悔しいのでこの場で再挑戦してみることにする。
「社交ダンスなどしたこともないある中年男性サラリーマンが、偶然見かけた若い女性のダンス教師に惹かれ、幾多の困難のすえ、彼女と踊る話」(64字)。
少々醜い言い訳をすると、この作品はいささかテーマが混乱気味だったと思う。
主人公と妻との関係を描きたいのか、主人公と女教師との関係を描きたいのか、それとも女教師の成長を描きたいのか、中途半端でどれが軸なのかわかりづらい。
だから、この課題でもどれを書いていいのか迷ってしまったのだ。

 

最後の方に出てきたシド・フィールドの話は、多分
『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』
(Syd Field著、原題『Screenplay: the foundations of screenwriting』)
から引用されたものだと思う。私も先日この本を購入したのだけれど、参考になりそうなことがたくさん書かれているし、講座の予復習にも使えるので、シナリオを学んでいる人にはお勧めの本だ。
ハリウッドのプロデューサーであるシド・フィールドは、シナリオの教科書の類を何冊も書いていて評判も高いにも関わらず、邦訳書がほとんどなかった人で、昔、宝島社から1冊だけ出ていたものの現在は絶版。原書で読むしかない状態が続いていた。『映画を…』はこの人の代表作で、待望の邦訳というわけである。
この本の共同翻訳者にはシナリオ講座校長の加藤先生も名を連ねられていて、巻末には加藤先生による日本のシナリオ書式の解説も付いている。おそらくその関係で、8階の講座事務局でも販売しているので、受講生はこちらで買うのが便利と思う。ちなみに、私も事務局で買ったのだが、その本には加藤先生のサインが入っていた。

 

岡先生も実践されているという登場人物についての経歴を書くという方法については、実は先週の小林先生の講義でも触れられていたのだが、そのときのお話では、小林先生はあまりこのやり方は重視しないとのことだった。ほかのシナリオの教育機関でどうなっているかは知らないが、シナリオ講座は担当の先生が2人付くシステムで、今期について言えば、岡先生と小林先生が結構対照的なのが面白い。ただ共通しているのは、お二人とも穏やかな感じで話されるところで、そのために教室でも質問などがしやすい雰囲気になっていると
思う。

 

講義終了間際には、『おっぱいバレー』の話があった。岡先生の評価は辛口で興味深かったが、差し障りがありそうなので詳細はここには書かない。映画館には観客が4人しかいなかったとの由。

 

講義終了後、教務助手の鈴木さんからこのブログの執筆を頼まれる。いつか来るとは思っていたが、予想より早かったな、と思う。たぶん講義開始前に所用で事務局に顔を出したせいだ。
何を書こうかなあと考えつつ帰宅の途につく。帰り道、蒸し暑いながらも雨は小康状態を保っていたが、深夜には雷が鳴ったようだ。

 

六助 (第53期基礎科夜間部)
東京都出身。35才。
出遅れのシナリオライター志望者。