2月12日基礎科夜間部(今川)
「私の頭のなかですでに映像はできている」
竹を割ったような性格、というたとえがあるけれどシナリオ講座の受講生にそんな人は見たことがない。みんなチューインガムなみに粘っこい性格だ。
噛めば噛むほどに味が出るという意味も込めて。
さて。『女』とはTNさんのことである。
今日は彼女が書いてきたプロットの講評でひと騒動あった。
そのプロットのさわりをざっくりと紹介すると――
ある日突然、男が妻と子供の前から消えてしまう。神隠しにあったようなかんじ。
実はその男は現実と少しずれた異空間に迷い込んでいる。どんな異空間なのかというと、自分からは妻と子供(つまり現実の世界)が見えているのだけれど、現実の世界の人には自分の存在が見えないといった様相なのである。
これについては、さまざまな意見が出た。僕も出した。ぐいぐい突っ込んでみた。
――つまりこの主人公は幽霊っていうことでしょう。
TNさん曰く、――違います。異空間に迷い込んだんです。
――しかし僕が思うにこれを映像にした場合、幽霊か、いいとこ透明人間にしか見えないような気がするのですな。結局、ラストで主人公死ぬし。これをね、映像化するとね、えーと、うんと、ま。やはり観客からすれば妻にも子供にも見えない男の姿が見えていて、結局3人の人物が画面のなかに写っているだけで・・・なんつーか、ま。(どうかなぁ幽霊にしか見えないんじゃないのん?)
すると彼女は、強く自信に満ちた表情で言い放った。
――私のなかですでに映像が出来ています。(むふふ、まいったか!)
争論はなんにも解決していないような気がするのだけれど、その言葉とTNさんの在りように感動して口を噤んでしまった。――映像化を心待ちにしてますよ。
チューインガムなみの粘り強さで頑張ってください。いや、頑張りましょう。
ああだこうだ文句言っている僕も書かなくてはいけない。
今川(第52期基礎科夜間部)
掛札先生とは、もはや親友。
友愛関係なのだ。