11月29日創作論講義: 池端俊策先生
67期研修科夜間部、二人目の方の高橋です。
ちょうど今、ヒーヒー言いながらプロット脱稿したところで11月29日の授業の話をします。
池端俊策先生をお迎えしての創作論講義
「人物のつくりかた」。
劈頭、故・野沢尚氏のお話から一気に引き込まれます。
「弟分」の野沢氏は人物よりストーリーから始める人だったが、
池端俊策先生はまず人物ありきで始める、と。
人物からシナリオを起こしていくうえで挙げられたのが
『プルターク英雄伝』 と岩下俊作著 『富島松五郎伝』 (『無法松の一生』の原作ですね)。
かたや古代ギリシア・ローマの英雄たちの、
かたや明治の下男の一代記から読み解くありふれた人物の典型。
人物の面白さを掘り起こす作業はドラマツルギーの根本であると。
先生の最近のお仕事であるNHKドラマ『夏目漱石の妻』のお話は、
まず主演女優尾野真千子さんへの興味から始まったのだそうです。
鏡子夫人の口述による 『漱石の思い出』 に準拠したこのドラマは、
思えば池端脚本、尾野真千子主演の『足尾から来た女』とも重なる展開があります。
余談ですが故・久世光彦氏のお名前が出たとき、ふと思い浮かんだのはTBSドラマ『夏目家の食卓』。
筒井ともみ氏の脚本によるこのドラマもまた、 『漱石の思い出』 を参照しています。
筒井脚本との10年目の競作だったのかと、点と点が結ばれる思いでした。
俳優ありきの企画ということで、伝説のTBSドラマ
『昭和四十六年 大久保清の犯罪』のお話も出てきたときは興奮しました。
群馬の連続婦女暴行殺人犯・大久保清の造形を徹底的に調べ上げることで、
主演者ビートたけしと大久保清の共通点を見出していく過程はとてもスリリング。
大久保清マニア(笑)の僕としても、うんうんと頷く楽しさもありました。
どさくさ紛れですが当ブログをお読みいただいている方は機会があれば
『日本セックス縦断 東日本篇』 と『戦後猟奇犯罪史』も観ていただいて、比較してみてください!
どの大久保清もそれぞれチャーミングで憎めません。
実在の人物に材を取った、もしくは主演俳優のキャラクターに対する興味が創作の源泉である
という力強い言葉の数々に、無からなにかを創造する苦しみに天啓が与えられたような気がします。