シナリオ講座・講義録2回(基礎科夜間部)
回想・その先にあるもの
回想シーンって、
絶対に使わなきゃダメですよね?
――講義が終わった後、
先生を囲んで近所の居酒屋で一杯。
そこではもちろん
ドラマ談義シナリオ談義に花が咲くわけです。
上記の質問は柏原先生の講義の後、
一人の受講生の口から出た言葉です。
回想。
よくシナリオ講義などでは、
回想に頼るな!
と、言われます。
ちなみに井田天も回想否定派です。
だって、わざわざ過去を描くのめんどくさ
・・・やっぱり先生方のおっしゃる事には従うべきだと思うのです。
そうです!
井田天は回想に頼らないシナリオを理想にしています!
で、話を戻して柏原先生の反応はと言うと、
「回想を使うとどうしても説明になっちゃうんだよ」
とのお言葉。
説明。
回想で説明といえば、殺人事件での犯人の動機とかで
よく使われる印象。
いわゆる二時間サスペンス、断崖絶壁でのアレですね。
「あなたが犯人なんですね。
どうしてこうなったんですか。
何があなたをそこまで駆り立てたんですか。
「・・・実は私は隠し子だったんですよ。
私にだって、遺産をもらう権利はあったんだ!
ざっぱーん!
以下、回想。
「くくく、あんたは所詮隠し子なんだよ!
お前に遺産をやるもんか!
「うるさい!
あの男のせいで俺とおふくろがどれだけ苦労してきたか!
どかっ!
「な、何をするんだ!うわあああああ!
ばきっ!どさっ。
「や、やっちまった・・・。誰にも見られてないよな。
『ど、どうしよう。
私、屋敷のメイドなんだけど殺人を目撃しちゃった。
↑
第二の被害者
回想終了。犯人モノローグ
「そう。あれは事故だったんだ。
それをあのメイドが見てて、
俺をゆすってきやがったんです。
だから俺は・・・殺すしかなかったんだ!」
と、こんなのがお決まりな流れのような気がするんですが
果たしてどうでしょうか?
それはともかく、回想を使うときは大抵、
その人物の過去を描く時と相場が決まっています。
そこで井田天、ピンと来ました!
柏原先生も脚本を手がけていらっしゃった、
国民的スナイパーのあの人です。
国民的スナイパーって呼び名もかなりアレですが。
それはともかく誰もが認める過去を持つ男。
そしてあれだけのお話の本数。
さぞかし作品中でゴル・・・
主人公の過去が回想で描かれていると思い、
井田天、柏原先生にたずねてみたところ・・・、
ないね。
過去を描いた話はあったけど、
いわゆる回想ではなく
完全に始めから終わりまで
一本の過去の話だったよ。
・・・一刀両断でした。
そうか、やはり回想はダメなのかっ・・・!(違
でも正直、あれだけ本数が多い作品なのに、
回想が無いってのもすごい気がします。
まあイメージ的に回想を入れようものなら、
それはそれでつまらないというか、
あの国民的スナイパーは
過去が明らかにならないからこそ、
魅力的な気もします。
ん?
というか、その人物の人となりを描くのに
回想を使用するのが間違っている?
そういえば、二時間サスペンスでの回想も、
あくまで事件の真相を
明らかにする為の回想であって、
犯人がどういう人間であるかを描く
回想ではない気がします。
ときどき回想終了後に
犯人が追い詰められて逆切れして、
実は小物だったという流れがありますが、
あれはあくまで付随というか、
おまけ的な扱いですよね。
ああ、なんということでしょう。
今まで井田天は回想とは
人物の人となりを描く為のものと
誤解していましたが、
実際は違っていたようです。
・・・あれ?
でも何で井田天は回想といえば、
人物の人となりを描くものと
誤解していたんでしょうか。
謎が一つ解けたら、また一つ新たな謎が。
バカなっ・・・!
いったいどういうことなんだっ・・・!
我々は今まで回想とは
「人物を描くもの」と誤解していた。
そこまではいい。
では、なぜ我々は一体、
回想を「人物を描くもの」と
誤解していたというのだ!?
何が我々をそうさせた!?
海よ!風よ!太陽よ!どうか教えてくれ!
我々は今まで操られていたというのか!
ざっぱーん。
続く