2009.8.18

8月18日創作論講義(山城)

本日の創作論講義「極私的脚本十箇条」
講師/西岡琢也(シナリオ作家)

 

 

シナリオ講座の毎週、火曜日はシナリオ創作論講義ということで、様々な作家の方々がお見えになり、様々な話をしてくれます。夏終盤の蒸し暑い8月18日、火曜日の話の主は、西岡琢也先生。

 

ウィキペディア(Wikipedia)で検索すると、「大学在学中に井筒和幸監督と出会い、ピンク映画の現場で助監督・シナリオを担当した。1979年、『暴行魔真珠責め』でシナリオライターとしてデビュー。『ガキ帝国』『TATOO<刺青>あり』などの話題作を執筆、日本を代表する脚本家となる」とあります。

 

創作論講義、夜の部は午後6時50分から。
講義室、前方のドアから、足取り軽く、さっそうと入って来られた西岡先生は、「いったい君たちはどうすんの?」とのっけから右ストレートのイントロダクション。

 

先生の話によると、TV局は不況で予算が無いし、テレビドラマ2時間もので、全盛期では5000万円ほどの予算が今は3500万円以下で、それでもドラマは予算がかかるので、大体2000万円で制作できるバラエティーに番組制作が移行しているとの話し。

 

邦画は元気だと言われるが、年間、500から600本の映画が製作されているとは言え、1000万円以下の低予算映画もあり、上映されない映画も多いとのこと。
プロデューサーも不在だと言われるし、役者も演技できるのが少ないし、こういう絶望的な状況で、貴方たちシナリオを学んでいる者は何を目指すのか?
関西訛りのある先生は、こんな未来が暗い将来、一体全体、これから先君たちは、「どうすんのよ?」と講座生に問いかけます。

 

「どうすんのよ」、と言われても、と思っていると先生は、さっさと本題の講義の方へ進んで行きます。まったくもってフットワークが軽い。

 

講義の内容は「脚本九箇条」。
以下に列記します。

①「よい脚本」は映像が浮かぶ
②「脚」で書く
③主人公の変化の過程を描く(ロードムービーが好例)
④人の心の動き、気持ちの揺れ、葛藤を映像に置き換える
⑤カメラに映らないものは書かない
⑥台詞劇(戯曲)ではない(台詞は要素の一部)
⑦登場人物の突出した部分を見つける(人物の歴史の節目を考える)
⑧登場人物とストーリーを修正しながら、ハコを作る(ストーリーは直ぐに出来る)
⑨不特定多数に伝える(脚本の客観視、自己の客体化)

 

この9箇条を、①から③が一つのまとまり、④から⑥が二つ目、⑦から⑧が三つ目、最後が⑨のみ、という4つのグループに分けて、それぞれのグループに先生が説明を加えて行きます。

 

印象に残る様々な話があって面白い。その講義の時のノートから拾ってみると、
「特定多数のスタッフやキャストがいて、作家と同じ映像を浮かべていたら、それはよい脚本」
「変化のプロセスを描くのがドラマ」
「腹を立てている男を撮っても、怒っていることにはならない、撮って解ることを書く、彼女は悲しかったといのはダメ、アクションを描く、映像に見えるシーンを撮ってゆく」
等等、感心する話。やはりこのあたりはボディーブローの連打をやられた感じがします。

 

当日の受講生をざーと見渡すと研修科からの受講生も多い気がしました。ということは人気のある先生なのだと思っていたら、後でWEBで調べたら、
「現在、日本シナリオ作家協会理事長、及び、大阪芸術大学映像学科教授を務める」
おおー。なんかこれは右フックか。

 

最後は受講生からの質問。受講生とはやはり経験、練習量、テクニック共に階級が違い過ぎます。受講生達からのストレートは、ほぼ完全に全てが空を切った状態でした。
持ち時間が終了すると先生は、またさっそうとやって来られた講義室前方入り口の方から去って行きます。

 

通常、火曜日のシナリオ創作論講義での大方の先生方は、質問の時間には質問をしないアジア的行動を察してか、しばらく前方講義用机に佇み、受講生のオズオズとやってくる質問に答え、しばらく後、本クラスのコーディネーター男、Y氏の誘いにのり、近くの喫茶店か、居酒屋に行く、というのが定番行動パターンですが、今回の西岡先生は、反撃を始めようと構えていた挑戦者に対し、プイと向きを変えるとタイムアウトの鐘がなり、さっそうと自コーナーへ戻るチャンピオンのような風情です。

 

なんとなく体のあっちこっちにダメージを受けたような受講生達は、講座後、お茶会です。ちなみに私はお酒会でしたが、10名ほどが参加しました。

 

その座で出た多く出た内容は、「なんか、今までの講座のまとめ、みたいな話だったなぁ」でした。
自分なりに振り返ると、当たり前といえば、当たり前の内容で、それでいて「脚本九箇条」という内容にまとめ(本来は10か条の予定だったとのこと)、未来のシナリオライターとして、その価値とその存在意義、役割を考えなさい、ということだったのかぁと、ジャブのうまい、後味の利いたバンタム級ボクサーとスパーリングをしたような火曜日でした。

 

山城(第53期基礎科夜間部) 
53歳、既婚、孫一人です。普段は途上国向けの教材を作っています。年を食って
いるのですが、ドラマを書いてみたいと思って、この講座を受けることにしました。