2008.7.16

7月16日研修科夜間部(糸柳)

「シナリオ講座は戦隊ヒーローだ!」

 

こんな唄がある。

 

 一人より 二人がいいさ
 二人より 三人がいい
 力も夢も そして勇気も
 それだけ強く でかくなる

 

特撮戦隊ヒーロー番組『太陽戦隊サンバルカン』エンディングテーマの一節だ。

 

2年前、ボクはN先生という著名なシナリオライターの弟子になった。
N先生は「意見があればどんどんいってくれ」といっていたので、さぞかし先生はボクのことを買ってくれてるのだろうと思っていた。ところが、先生が当時やろうとしていた企画に「どう考えても、これは実現不可能ですよ」と口をはさんだところ、「君は生意気だ」といわれ、わずか1か月で弟子をクビになってしまった。
「えー!何でもいえっていったじゃん」と先生の理不尽な言葉におどろかされた。
労働者ならば、「不当解雇だ」と労働基準法を盾にとって先生と戦うこともできたのだろうが、師匠・弟子の関係にそれが適用されるはずもない。
ハダカ一貫で路上に投げ出されたボクは、自分のチカラでデビューのきっかけを切りひらくしかなくなった。とはいえ、どうやってそのきっかけをつかめばいいのか、まるでわからない。そこで、あらゆる方法をためしてみた。映像会社に片っ端に自作のシナリオを送りつけてみた。
だが、待てどくらせど返事はこなかった。いくつかのシナリオコンクールにも応募してみた。ことごとく落選した。いやいや、まだ方法はあるはずだ。今度は、日本映画監督協会経由で尊敬する監督さんにシナリオを送ってみた。返事はきた。
その監督さんは手紙でこう述べていた。
「まあ、ガンバりたまえ」
まったく途方にくれてしまった。
それで、八方ふさがりになったボクは、ある友人に相談をもちかけてみた。
すると、友人はこういうのである。
「シナリオスクールに行くしか、もう道はないんでないかい?」
けれども、シナリオ講座に通うことは、ボクのプライドが許さなかった。
というのは、ボクは日本映画学校の卒業生だ。しかも、N先生に一度は認められた人間だ。なのに、なぜ今さら、金を払って、一からシナリオの勉強をしなきゃならないんだ。冗談じゃない!
「でもさ……」その友人のアドバイスはつづく。
「オレは君のシナリオをおもしろいと思うけど、君の作品はことごとくコンクールに落選するし、誰からも相手にされないだろ? とすれば、プロの目から見て、何かしらの欠点があるからなのではないか。その欠点を確認だけでも、スクールに通うことは有意義なんじゃないかな」
そういわれれば、そんな気がしないでもない。ボクのこころはじょじょに変化していった。そして、その変化はいつしか決意へと変わっていったのである。
ただ、基礎からシナリオを学ぶことだけは、真っ平ゴメンだった。今さらト書の書き方や、原稿用紙の使い方を教わったところで、時間と金のムダじゃないか。
しかし、あらゆる講座のパンフレットを取り寄せてみたところ、どこもかしこも基礎科を修了してから、研修科にすすむことになっている。
ところが、あるスクールだけは、基礎科をすっとばして、研修科からの入学がOKという。それが、シナリオ作家協会の主催するシナリオ講座だった。しかも、講師の先生は、映画学校時代に面識のある柏原寛司氏!
こうして一も二もなく、ボクはこの講座を受講することに決めたのだった。

 

ボクが作協の講座を受けはじめて、すでに3か月が経った。
今では、やっぱりココに来てよかったと、ボクはしみじみ感じている。
ボクの通う講座では、柏原先生のほか、大野武雄先生、村橋明郎先生が教鞭をとられている。受講生がその先生がたのアドバイスを聞いて、シナリオの添削をやっていくうちに、アラ、不思議、シナリオのクオリティがみるみるあがっていくではないか。そして、自分でもそれが実感できるのだ。
それに、何といっても、同じ目標をもつ仲間がいるというのが心強くある。
うかうかしていると、彼らにおいてけぼりをくうという危機感もある。だから、こちらとしても、競争心を掻き立てられ、何とかいいものを書こうという気になる。

 

 一人より 二人がいいさ
 二人より 三人がいい
 力も夢も そして勇気も
 それだけ強く でかくなる

 

独立独歩でやっていくより、人と人とのぶつかり合いを経験するほうが、自分の欠点や可能性を見出す近道なのではないか? 今ではボクは、『サンバルカン』のエンディングテーマでうたわれていたような思いをつくづく感じている。
このブログを読んでいるシナリオライター志望のみなさん、ひとりでクヨクヨ悩むより、とにかくシナリオ講座に通いましょう。きっと自分の人生にとって、プラスになることこそあれ、マイナスに働くということはないはずですよ。
ただし、ココを出てライターになれるかどうかは、また別問題なんですけどね……。

 

執筆/糸柳 (第50期研修科夜間部)
長崎県出身。日本映画学校映像科卒。
シナリオ講座は今回が初受講。いつも講師の目の前の席に座っている。