シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
    高橋留美 (シナリオ作家 )

  広島県出身。
  大学卒業後、OL、テレビ制作アシスタント等を経て脚本家に。
  第53期基礎科昼間部専任講師。

  ■TV
  「ショムニ」「顔」「非婚家族」「ナオミ」「こんな恋のはなし」
  「世にも奇妙な物語」「ドールハウス」「女刑事みずき」他多数。


                            


2009年3月30日(月曜日)

4月から、シナリオ講座基礎科の専任講師を引き受けることになった。

もう一人の講師、渡辺千明さんは講師経験豊富な方で、他の学校でも教えていらっしゃる。
聞くところによると、毎年、教え子からコンクール受賞者を出すというほど優秀な講師だ。
それに引き替え、私はといえば・・・今回が全く初めての若葉マークの講師である。

正直、講師を引き受けるかどうかは悩んだ。
人に教えるには、その種の才能が必要だと思うからだ。
書く仕事は、ある意味、目的が同じ相手(プロデュサーやディレクター)をいかに満足させる本が書けるかといった自分との戦いで、結果良ければすべて良しの世界だ。
だから、結果に至る中身や課程がどうであれ、自分なりにペースややり方が自然とできあがっている。
でも、講座に来る不特定多数、年齢も職種も、まして初めてシナリオを書くという人を相手に、いったいどうしたら上手く教えられるのか悩んでしまった。

とはいえ、今更悩んでも仕方がない。
引き受けたからにはやるしかない!と自分に言い聞かせている今日この頃だ。

先日、ついに受講生の面接をした。
私が担当したのは3名。大学生2人と社会人が1人。
受講の動機を聞くと、その中の一人が「好きな作家がここを卒業していたから」と答えた。
それを聞き、思わず17年前を思い出した。
本気でシナリオをやろうと決意し、このシナリオ講座に申し込み、研修科の面接を受けた。
そのときの講師は、今の会長の加藤正人さんだった。
受講の動機を聞かれ、先日の受講生と同じことを言ったのだ。

あれから17年・・・。
綾小路きみまろではないが、「あの頃は若かった、時が経つのは早いなァ」と実感する。
中身は全く変わらないのに確実に年齢と体重だけは増えている。
私が研修科へ通った頃、講座は早稲田のYMCAにあり、私にとってシナリオ講座といえば、大通りから一本入った木や花に囲まれた古い校舎だった。
教室や廊下に学校独特の匂いがして、「これからここで、半年間、学ぶんだ」という期待以上に、不安の方が大きかった。

今回の面接時、別の受講生から「何人がプロのライターになれますか?」と聞かれた。
これこそ、あの頃の私が抱いていた不安だった。
あの頃は、ライターになれるかどうかではなく、シナリオライターになるものだと、何の根拠も自信もなく自分に言い聞かせていた。
そうしないと、少しでも否定的なことを考えると一気に奈落の底に落ちてしまいそうだったからだ。
一種のマインドコントロールだが、でも、そうなるものだと思い込めば、いつしか気持ちは不安よりも、自然におもしろいモノを書くにはどうすればいいか、何を勉強すればいいのかと、目の前のやるべき事が見えてきた。

今回、講座を引き受けることで、忘れていたあの頃の気持ちを思い出した。
なんだか新鮮な気持ちになった。



2009年3月31日(火曜日)

ライターは基本的に家で仕事をするので、料理上手な人も多いと思う。
根が怠け者の私は、料理上手でも、料理好きでもなく、食べたいものを食べたいときにつくるという程度だ。

先日、実家の母が送ってきた宅配の中に佐賀県産の『プッチーナ』という野菜が入っていた。
新しい野菜で、テレビのワイドショーでも紹介されたらしいので、ご存じの方もいらっしゃるとは思うが、一見、春菊の葉を大きくして葉と茎に水滴をつけたような多肉植物だ。
南アフリカ原産で、そのまま食べると味はシャキシャとみずみずしくて、何よりビックリしたのは薄い塩味が植物自体についていることだ。
この塩味は、茹でても、揚げても、炒めても変わらないそうだ。

別に『プッチーナ』の宣伝をしているわけではないのだが、最近、子供の頃と比べると、野菜も果物も本当にいろんな新種が次から次と出てきて、情報に敏感でないと知らないうちに取り残されていたりする。

私など昔ながらの野菜や果物で十分生きていけると思うけど、実際、次から次と新種を提供していく農家の人は大変だなあと心底思う。

私は苺が大好きで、この季節、ほとんど毎日食べている。最高の季節だ。
でも、私が高校生の頃、苺の旬は5月頃だったと思う。
今は2月、3月がピークで5月に入ると店頭からは消えている。
いつからだろう?苺がクリスマス頃から普通に店頭に並び始めたのは。
最近は白い苺も出てきた。
イマイチ食欲はそそられないが・・・。既成概念もあるけど、食欲は色と深ーい関係があると思う。
やっぱり苺は赤でしょ。
でも、そのうち、黄色とか青(緑)苺もでてくるかもしれない。
以前、真冬にスイカをもらって食べたこともあるが、正直、おいしいとは思えなかった。
きっと高いんだろうなとは思ったが、やっぱりスイカは蝉が鳴いて、暑い暑いと汗をかいている真夏に食べたい。

とか何とか言いながら、クリスマスに苺が店頭にないと不満だったりもする。
やっぱり、農家の人は大変だ。



2009年4月1日(水曜日)

今年の花粉も、そろそろスギはピークが過ぎ、次はヒノキの番だ。

私が花粉症になったのは、今のマンションに引っ越してきてからだ。
花粉症と同時にアトピーのような湿疹が体のあちこちに出て、かゆくて眠れない夜もあった。
近所の皮膚科に通い、良くならないのでまた別の皮膚科と、病院のハシゴを繰り返していた。
そんな時、知り合いから「もしかしたらそれは環境アレルギーかもしれない」と言われ、北里大学病院の環境アレルギー外来を紹介してもらった。
そこは、生活環境からくる様々な化学物質アレルギー(シックハウス、動植物、菌類、植物など)を検査してくれるところらしい。
今からちょうど2年前のことだ。

予約すると、病院から大きな封筒が送られてきた。
受診の際の説明書と活性炭付きの大きなマスクが入っていた。
受診一週間前からタバコ、アルコールはもちろん香りの付いたシャンプー、石鹸はNG。受診日はお化粧もダメ。
タバコは吸わないので関係ない。アルコールも飲まなければ飲まないでOK。
シャンプー、石鹸もすでに無香料・無添加をつかっていたのでOK。
でも、都心にある北里大学病院までスッピンでいくのはさすがにチョット・・・。
素顔でいける範囲は、近所のスーパーと隣の駅のTSUTAYAまでと限られている。
どうしようと思ったが、送られてきた大きなマスクに帽子という格好で行くことにした。
別にスッピンでもいいのだが、こんなとき知り合いにはあまり会いたくない。

病院では、専用のガウンとヘアーキャップに着替え、問診、採血、自律神経系を調べるため、真っ暗な部屋で光を目で追うという検査を数種類受けた。
なんだかモルモットになったような気がした。

約半年後、結果が来た。
なんだこりゃ!拍子抜けしてしまった。
アレルギー結果は植物、動物、食物、ハウスダストなど検査項目すべてが陰性。
でも、現実には花粉症やアレルギー症状が出ている。
これではお手上げだ。

あれから花粉症も、湿疹も続いている。
花粉症は一度発症すると治らないと聞いているが、湿疹の原因もわからずじまいだ。
結局、アレルギーの原因がわからないので、体質改善を図ろうと玄米、野菜中心の食事にしたり、散歩や早寝したりして生活自体を気をつけるようになった。
それとは別に、また評判の病院を教えてもらったので、近いうちに行ってみるつもりだ。
若い頃、お年寄りが集まるとどうして病気の話しかしないんだろうと思っていたが、気がつくと私も完全にそっち側に入っていた。こうして年をとっていくのか・・・。
ちなみにあの北里大学病院の環境アレルギー科はなくなってしまったと、つい最近、知り合いから聞いた。



2009年4月2日(木曜日)


今住んでいる街の防犯サービスに登録しているので、毎日、この街で発生した犯罪情報がメールで届く。
毎日のように空巣、ひったくり、チカン、事務所荒らし、自転車泥棒、車泥棒、車上荒らしなど時期によって違いはあるけど、一日も犯罪のない日はない。
車や自転車を持たない私は、車両関係より、やはり空巣や居抜き、ひったくりの方に敏感になる。

ここは郊外で、昼間は女性か子供、老人がほとんどだ。
駅前から一本道を住宅街に入ると、本当に人っ子一人いないときも珍しくない。
ひったくりも平然と昼の日中に起きている。
バイクで接近し、歩いている人のバックをひったくるのだ。
住宅街で実際に被害にあっても、家の中にいるのは女性や老人や子供だし、助けを求めてもどうしようもないだろうなと思う。
私だって、目の目でひったくりにあってる人がいても、きっとどうすることもできなくて110番するのが精一杯だろう。

数年前、ピッキング強盗が多発していた頃、うちのマンションでも子供のピンポンダッシュではなく、大の大人がインターフォンを押して、住人が応答するとモニター画面に映らないようその場にしゃがみこんで隠れることがあった。
私も何度か被害にあった。
ピンポンと鳴り、応答すると部屋のモニターには、相手の額から頭の上だけがかろうじて見えている。
相手は男性、それも中年の男性らしかった。
最初、何をしてるのか、セールスなのか、ふざけているのかわからなかった。
だが、その後、最寄りの警察から、ピッタリこの手口に当てはまる空巣が頻発していると注意書きが配られた。
泥棒はインターフォンを押して住人が在宅かどうか確認していたのだ。
住人が在宅で応答してきたら、自分の顔がモニターに映らないようその場にしゃがみ込んでいたらしい。
あの額の男が泥棒だったのかと思うと、さすがに気持ちが悪い。

今はその手はなくなったけど、近所では毎日のようにどこかが空巣の被害に遭っている。
現に昨日、うちも含め同じ階で半数以上が、名前を書いてなかった真っさらな玄関のネームプレートを盗られた。引越して12年目のことだった。
いったい世の中どうなっちゃったんだろう・・・。



2009年4月3日(金曜日)

北朝鮮のミサイルが4月4日の11時から16時の間に発射されるという。
ミサイルの軌道の下の人は、なんともイヤな気分だろう。
どうすればいいのかも具体的にわからない。
軌道以外のどこに飛ぶかわからないという情報もある。
結局、どこにいても危ないときは危ないということらしい。
こんな物騒なことばかり気にしていると気分がふさぐので、何か楽しいことを考えることにした。
楽しいことと言えば、やはりペットだろう。
いつも猫を飼いたいなと思うのだが、動物を飼うのは飽きっぽい自分の性格上ムリだとあきらめている。

以前、夜店で売っているような小さな赤い金魚を一度に10匹もらったことがある。
さっそく一晩溜め置いた水を入れた金魚鉢に入れておいたら、3日間で9匹が死んだ。
エサのやり過ぎか、元々弱っていたのか、酸素不足か・・・かわいそうなことをしたが、いずれにしろ、たった1匹、小指の先ほどの小さな茶色いフナのような魚だけが生き残った。

さすがにこの一匹は何とか生き延びさせたいと大事にしていると、順調に大きくなっていった。
成長すると体の色が赤くなり、この魚は赤い金魚の稚魚だったとわかった。
その後も何事もなくこの「生き残り君」は元気でいたが、唯一困るのはピョンピョン跳ねて金魚鉢から飛び出してしまうことだった。
私が家にいれば気付いて金魚鉢に戻せるが、外出しているときに飛び出されては死んでしまうと、あれこれ考えた結果、洗濯ネットを金魚鉢にかけることにした。
これで、金魚の飛び出しは防止できたが、ある日、うっかりしてネットをかけるのを忘れてお風呂に入ってしまった。
お風呂から上がり、金魚鉢をのぞくと金魚がいない。
驚いて部屋中を探したがいない。でも、いくら飛び跳ねるのが好きでも部屋から出るわけがない。
それでも見つからないので不思議に思いつつ、ふと植木鉢のポトスの葉を上げてみた。すると、茂った葉の下、ポトスの鉢を敷いた新聞紙の上にいた。
30分位は経っていたせいか、金魚の体はピクリとも動かない。
死んでしまったんだ。
ショックで認めたくなくて、思わずダメもとと金魚を水の中に入れてみようと思った。
だが、新聞紙に金魚の体がピッタリとくっついて離れない。体の水分を新聞紙に吸い取られていたのだ。
仕方がないので、新聞紙を金魚の体につけたまま破り、そのまま水の中に入れてみた。
すると体を横にして浮かんだまま動かなかった金魚が、ピクリと体をくねらせたと思ったら、横向きながら泳ぎだしたのだ。
嬉しくてそのまま見ていると、金魚は体を縦にして元気に泳ぎだした。
ヤッタ!と思ったが、金魚の体の半分にはしっかりと新聞紙がくっついたままだった。
それ以来、私は、その金魚を『魚拓』と呼ぶことにした。

その後、『魚拓』は、旅行に行くとき預けた友人の家にそのまま引き取られ、大きな水槽を買ってもらい大事にされていたが、「一匹ではかわいそう」と友人がもう一匹金魚を買ってきて水槽に入れたところ、それからしばらくして死んでしまったということだった。
どんな逆境でも生き残ってきた『魚拓』だが、金魚関係のストレスで死んでしまうなんて。
なんだか複雑な気持ちだった。
せっかく楽しいことを考えようと思ったのに、これでは更に落ち込んでしまう。



2009年4月4日(土曜日)


北朝鮮のミサイルは結局、5日、11時30分に発射された。
ブログの日付は土曜日(4日)だが、書いているのは5日の日曜なので今日、発射されたことになる。
ここ数日、ヤキモキしながら一日中テレビを気にして、隣国の傍若無人に振り回されるなんて全く不愉快だったが、今はワンセグがあればどこにいてもテレビの情報が入る。
2週間前まではWBCで盛り上がり、ワンセグが大活躍。今はミサイルが心配で、またもや大活躍。
こういう私は実はワンセグは持っていない。
正直、ワンセグなんて必要ないと思っていたが、こんな世の中になったら必然なのかもと思ったりする。

でも、現実にワンセグよりもっと必然なのは、15年使ってきた冷蔵庫の買い換えだ。
調子が悪いわけではないが、さすがに15年、今時のと比べたらかなり省エネに差があるし、炊きたてご飯がそのまま急速冷凍できるなど今時の冷蔵庫は便利な機能が全く違う。
去年から、ビックカメラやヤマダ電気などあちこち回り、メーカーのパンフレットを見比べて、人から評判を聞き、最終的にこれだという機種を決めたのだが、いざ買い換えとなると冷蔵庫はその前の準備が大変だと気付いた。
買い換えの日までに、食品の生モノを処分するか食べきってしまわなければならない。
今の季節なら半日くらい部屋に置いても保冷袋で何とかなると思うが、買い換え前に、少しでも冷凍庫の生もの肉や魚、野菜、麺類、アイスクリームなどを食べおこうとスケジュールをつくりはじめた。
これが結構、面倒だ。
食べたくなくても食べなければならないと思うと、食欲はなくなる。
それでも、食材を棄てようと思わないのがやはり昭和世代のド根性か、ただのケチなのか。

白物家電はたいてい10年を超えている。
買い換える度、思わず買った当時の自分を思い出し、懐かしさや寂しささえ感じてしまう。
でも、買い換えが終わり、ふだん見慣れたスペースにピカピカ新品の家電が収まり使い始めたとたん、どうしてもっと早く買い換えなかったのかといつも後悔する。



2009年4月5日(日曜日)

3月30日から担当したブログも、今日が最後だ。
この一週間はWBC日本優勝の余韻から始まり、お花見シーズン到来、北朝鮮のミサイル発射と、何とも気分の乱高下する忙しい一週間だった。

ブログを書くのは初めてだったが、こんなに大変だとは思わなかった。
これもいい機会だと思い軽い気持ちで引き受けたのだが、私のような根っからの怠け者は、朝起きて「あっ、今日もまたブログ・・・」と思ったとたん気持ちがずっしり重くなる。
あと3日、あと2日と終わるのを指折り数え一週間を送っていた。
毎日ブログをつけている人は心底すごいと思う。

ということで、終わると思ったら気分も軽くなったので、狭い我が家のベランダを紹介しようと思う。
(写真をアップしたことがなく、お見せできないのが残念です)
今は紫と白のチューリップ、ヒヤシンス、ナデシコが次々に咲いている。
植物に興味のない人には全くどうでもいい話だと思うが、私は小学校の頃、お花係(花に水をやる係)をやるほど植物が好きだった。
そのせいか、今では植物がストレス解消になっている。
家に遊びに来た友人がリビングを見て「ジャングルみたい」と言ったことがある。
一時期、こういう私もストレス解消に服や靴など買い物に走っていたが、一度も着ない服や靴でクローゼットははみ出し、無駄にお金はなくなるしでロクなことはなかった。
それに比べてお花や観葉植物は、たった1000円程度の鉢植えで何ヶ月も、時には何年も癒してくれる。
一番簡単な朝顔でも、春に種を蒔いた後、水やりだけで3ヶ月後にはちゃんと花を咲かせてくれる。
初夏、最初の花が咲いたときは本当に報われた思いがする。
報われると人は嬉しいものだ。
でも、現実の仕事はどんなに頑張っても必ず報われるとは限らない。
無理矢理、頑張ろうとすると心も体も折れそうになる。
ある時、枯れたと思い棄てるつもりでベランダの隅に放っておいたミニバラが、雨水だけで生き延びて、世話をしていたときより元気に花を咲かせたのには驚かされた。
植物はどんなひどい環境でも簡単には死なない。
私にとって植物から与えられるパワーは、ときにユンケルより利くこともある。


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