2008年9月22日(月曜日)
今日から担当する田部俊行です。
井上由美子さん、連ドラでお忙しい中、お疲れ様でした。お会いしたことはありませんが、主婦業をこなしながらのご活躍、凄いです。
こっちはかみさんに朝昼晩と食わせてもらってる立場。掃除、洗濯も。
やるのは朝のゴミ出し、中学生の娘を駅まで車で送ること。そのため毎朝5時半に起きなくちゃならない。
ま、この程度はやらないと、かみさんのストレスが溜まって険悪な空気になるし、仕事にも影響するので。
打ち合わせやシナリオ講座や見たい映画があったりでこっちが外出する時、かみさんはほんとにホントに嬉しそうな顔をする。
やっぱり、亭主稼いで留守が一番いいのか……。
いかん、冒頭から愚痴っぽい世間話になってしまった。
こんな毎日の繰り返しの中で、ああでもないこうでもないとドラマをひねり出してるわけでして。
以上が私の一週間……!
で、終わるわけにもいかないので、28日までグダグダ日記を書きますので、皆さん(読んでる人いるのか?)お付き合いください。
まずは相棒の紹介から。
写真(プロフィール)の一番左のPCは7年前に初めて自作したPenV-1GHのXP。右側の横置きタイプはネットオークションで五千円位で手に入れた中古でPenV-450MのWIN2000。これがシナリオ執筆用。古いマシンでもワープロ機能だけならサクサクと快適に動きます。右端の小型が今年の5月に自作したVistaHomePremium。「花衣夢衣」を書いている時は、早くこのマシンを自作したくて、その思いだけで書き終えました。戦艦大和のプラモデルを組み立てたガキの頃と同じ喜び。
自作の2台には前に飼ってた2匹の愛犬の名前をつけています。
さて今日一日を日記風に書いてみると……。
いつものように5時半に起きて、娘を駅に送って行き、そのまま仕事に向かえばいいのに、2時間ほど眠ってしまう。
中途半端に寝ると頭がボーッとして、しばらく使い物にならない。
ケーブルテレビの契約書を郵送する期限が過ぎているのに気づき、慌てて電話する。2011年にデジタル放送になるとかで、先月、工事人が押しかけてきてデジタルチューナーを設置していったのだ。電話しないと自動的に高い料金のメニューにされちゃう。CS放送なんてほとんど見ないのに……。そんなこんなで10時になってしまった。シナリオ執筆は午前中が勝負なのです。
書き溜めた原稿を読み直して手を入れる。
書き溜めたといってもまだ8枚(ペラで30枚位)。最近何やかやで集中できず、間が空くと原稿に手を入れたくなる。グチャグチャと細かく手直しをしていると次第に感覚が戻ってきて、そのまま書きに入れるのです。
これは映画の仕事。ある監督にこっちから持ち込んだもの。監督も乗ってくれて一緒にストーリーを練り直し、監督が自前で企画書を印刷してくれた。
「俺が金を集めるから、お前はいいシナリオを書け!」
今月中に仕上げる約束が、まだ8枚……(涙)
これ、読んでないだろうな……(汗)
ようやく集中力が戻ってきた頃、すでに12時。
午後から東映本社の試写室で見なくてはならない映画があるので外出だ。
かみさんホントに嬉しそう。
映画の別企画が進行中で、参考に見ておけともらったチラシが『しあわせのかおり』(監督・脚本
三原光尋)。
チラシを見ると、多くのプロデューサーの中に知ってる名前が……!
今、基礎科で教えている生徒の名前ではないか。そういえば、仕事の関係でシナリオというものを一から勉強したいのです、などと言ってたっけ。
早速彼に電話して、試写の席を確保してもらう。
3時半に上映開始。座席に「関係者」の張り紙があった。嬉しい。
持つべきものは良き生徒かな。
2時間4分、楽しませてもらった。
なかなか良い作品だった。藤竜也がワンさんという中国人のコックで、コック帽をかぶり、佇むだけで絵になっている。何もしゃべらなくてもスクリーンの中で存在感を示せる役者は少ない。藤竜也はその少ない役者の貴重な一人だ。
最後はグッとくる仕掛けがあって好きだが、欲を言えばワンさんをもっと徹底して意固地な男にしてほしかった、かな。
見終わって外へ出ると夕暮れ。
埼玉の田舎から出てきたのだからもう一本見て帰りたいところだが、この企画のプロットを考えなくちゃならない。
映画館(今回は試写室)で見ると、のめりこんで見てしまうので、見終わったあとにグッタリと脳が疲れて、あまり考えられない。
参考に見るには、レンタルで借りてきて見たほうが客観的に見ることができていいな。思いついたこともすぐメモできるし。
1時間ばかり考えようと思ってお気に入りのネットカフェに入るが、「テポドン」だの「金正日死亡?」などの週刊誌の見出しが気になり、結局2冊の週刊誌を読んで時間を潰してしまった。
簡単にメシを食って家へ帰ると、9時過ぎ。
ゴロゴロしながら寝てしまい、ハッと起きると深夜。明日は祝日なのに、娘はテニスの部活があっていつもどおりに学校へ行くらしい。
また5時半起きじゃないか……。
このまま寝るしかない。
明日こそ集中してドンドン書こう!
2008年9月23日(火曜日)
世間は祝日だがこっちには関係ない。関係ないハズだった。娘が中学へ通うようになるまでは。
部活でテニスなんぞ始めたもんだから、やれ練習やれ部内戦やれ対抗試合だとかで土日祝日もやたら登校する。こっちも5時半に起きて駅まで送ることになる。せめて祝日ぐらいは寝坊したい。世間のお勤め人の方々のように。
で、今朝も結局5時半起き……(涙)
今日は外出の予定なし。
となると一日中閉じこもりで、さして日記に書くようなことはない。朝昼晩とメシを食わせてもらい、仕事の合間にゴロゴロし(逆か?)、メタボ対策で3キロほどウォーキングするが、それも近頃なまけ気味。
4月から講座の基礎科(夜間部)を林誠人先生と受け持つことになり、1週おきとはいえ生活にリズムができた。暇な時にはだらけた生活を鞭打つ良いリズムなのだが、本業が忙しくなると尻に火がつく悪いリズム。
今月はちと厳しい。
9月になって生徒たちのシナリオがゴソッと提出され、林先生と分担して教室も二つにわけて講評するような状態。
しかも突然花粉症に襲われ、目医者へ行くと、3年前の9月にも同じ症状で来院されてますと言われ、9月は鬼門だったかと気づく。そういえばアメリカの同時多発テロも9月……ノストラダムスの大予言は7月だったが1999年と魔の9並び……うちの上司の誕生日も……くわばらくわばら……。
5時半に起きて娘を送った後、この日記を書き(結構大変……)、午前中に今月末締切り約束のホンにとりかかる。
あまり進まず……(やっぱり)。
昼は祝日でもあるので近場のイタリアンで外食。給料後の祝日だから大混雑でかなり待たされる。色んな種類のピザをワンピースずつ、いくつでも食べられるお得なランチコース。サラダとパスタを食いながら、店員が差し出すピザに意地汚く何度も手を伸ばす。
これがまた後になって腹が張るんだ。胃袋に血が回って、脳は休業。
一休みして、生徒のシナリオを読む。
火曜、水曜と読み込んでおかないと、木曜日の講座に臨めない。
生徒たちが精魂込めて書いた(ホントか?)シナリオだから、真剣だ。ある種、格闘になる。
こっちは講師が本業じゃないので、教えるためのノウハウはない。20年以上この世界で食ってきた経験でぶつかる。だからなるべく印象批評はしない。
具体的にいく。
たいてい何が書きたいのかわかってない場合が多い。だから構成も人物たちのセリフも練られていない。
講評シナリオは、まず生徒たちの意見発表から始まる。最後に作者が意図など苦労した点を述べる。この時、大いに反論して自分の作品を擁護しても良い、するべきなのだ。
でも、でもでも、<終>まで書き上げるということはたいしたもの。良いか悪いかだって、とにかく書いたブツがなくちゃ始まんないのだから。
生徒との格闘を終えると、もう夜だ。
自分との格闘はどうした?
午前中進まなかったホンをどうする?
別企画のプロットの締切りをどうする?
木曜が締切りじゃないか。
アイデアが出なければ、プロデューサーと沈黙のお見合いになる。
うつむいて頬を赤らめるのはゴメンだ。
明日はまた5時半起きだぞ。
最低5時間は寝たい。
あと何時間もないじゃないか。
昼のピザは腹持ちがいい。
夜の食事を抜けば仕事ができるぞ。
風呂なんてもちろん抜きだ。
でも木曜の夕方送信すれば、2日使えるな。
ビール飲んで寝るか?
焦ってもアイデアは出ないし……(笑)
2008年9月24日(水曜日)
5時半に目覚ましが鳴る。
だが起きられず、30分寝過ごす。
慌てて飛び起き、娘を駅まで送る。
シャワーを浴びて、ボーッとした頭をたたき起こす。
今日も外出の予定なし。
日記を書き終えて、約束のホンを少しでも書き溜めねば。
どうも集中して自分の仕事に没頭できない。
製作決定してないので多少は締切りを延ばしても……という、甘い考えが底にあるからだ。
まだ監督との約束という縛りがあるから、少しずつでも書き進めているが、何の縛りもなく自分の創作意欲だけで書き抜くというのはかなりしんどい。
やりたい企画はいくつかあって、暇な時に企画書なりホンにしておけばいいのだが、拘束がない中でああだこうだといじくっている内に仕事が舞い込んできて、結局グズグズとなってしまう。
ライターは縛りがないとダメだ。
つまり、Mだ。
ただし乱暴に縛られると、嫌気がさす。
気持ちよく縛ってくれ……(笑)
3枚(ペラにすると12枚!)書いて昼になる。
かみさんは近所の友達と食事に行ってしまった。
キッチンには水の入った鍋とレトルトカレーが置いてある。湯を沸かしてカレーをあっためて食べろというわけだ。
別に、文句はない……(涙)
午後はまた生徒のシナリオと格闘だ。
明日が締切りの別企画のプロットはどうする?
しかも明日の夜は基礎科の最後の講義があるし、終了後は飲み会に雪崩れ込むはず。
アイデアの尻尾は何とか掴めたような気がするので、今日明日でプロットをまとめて区切りをつけ、気持ちよく生徒たちと飲みたい。
何とかなるだろう。
2008年9月25日(木曜日)
今日の一日は大変だった。
まずプロットを仕上げてプロデューサーに送らねばならない。
夜は基礎科の最後の講義がある。講評する2本のシナリオはすでに読み込んであるが、講義の前にもう一度目を通す必要がある。
リレー日記のこともある。
毎日少しずつ書き溜めている約束のホン、今日は無理だ……(涙)
いつものように5時半に起きる。
プロットに取り掛かる。
原作が短編漫画なので話をふくらませなくちゃならない。ふくらませる部分はこっちの裁量だ。先週提出した1稿目は思いついたこと全部をぶちこんだ。
結果、テイストが違う、メロドラマ過ぎるなど否定的意見が出る。それでいいのだ。相手の求めるモノとこっちのやりたいモノが具体的に見えることが大事。
だから2稿目は慎重になる。またテイストが違うと、相手は不安になる。3稿目も違ってるとかなりヤバイ。
1稿目で使える設定があったので、それを手懸かりにモヤモヤと考えていたアイデアを、キーを打ち込みながら書き進めていく。
電話が鳴る。
出ると、町内会で開かれる運動会の件だ。そんなこと知るか! かみさんじゃないとわからないので適当な返事をして切る。
今日は下の娘の小学校が開校記念日で休み。だから二人でディズニーランドへ行ってしまったのだ。
せいぜい楽しんでくれ、こっちは仕事をやる……(涙)
邪魔が入ってしまった。
2時送信を目標に、ひたすらキーを叩く。
また電話が鳴った。
ツタヤのおねーちゃんが、CD2枚がまだ返却されてないんですけど。
忘れてた。100円で借りられるサービスデーに、松田聖子と高橋真梨子を借りたのだった。延滞料がついて1300円だと言う……ガックリ。
何で追い込まれている時に、こんな電話がかかってくる?
それでも1時頃には書き終えて、送信。
ツタヤに聖子と真梨子を返しにいく。
途中腹ペコなのでバーミヤンに入る。おばさま連れの客ばかりの中、安いランチを一人でコソコソ食べる。
何だかんだ始末をつけて、3時過ぎにうちを出た。
お気に入りのネットカフェに篭って、講評シナリオにざっと目を通す。
5時過ぎに店を出る。
講座に向う前に新宿のツタヤに寄る。プロットの参考にと借りたDVDを返さなくちゃならない。
どうも今日はツタヤの日だ……(笑)
ここまででかなりヘロヘロ。
だが立派に(?)最後の講座を務める。
ラストの講評シナリオはコメディだ。コメディだから何でもありはダメ。
やっぱり人物の背景を押さえなくちゃ。初めから終わりまで笑わせることなんてできっこない。闇があっての光、涙あっての笑い。
こっちもコメディは好きなので、思いついたことをバンバン言う。最後は爆笑になった。
笑って終われて良かった。
泣くのはこれからだ……(涙)
分担して講義してくださった林先生たちと合流。
いつもの飲み屋で打ち上げ。
ビールがうまい!
修了式は明後日だ。
2008年9月26日(金曜日)
今朝も5時半起きだ。
昨夜の打ち上げでうまいビールを飲み、帰宅したのは午前1時半頃。
何だかんだで寝たのは2時過ぎ。
実質睡眠3時間ちょっと。
さすがに辛いが、これまでの経験でいうと6時間とか7時間より3時間程度の睡眠の方が頭がシャキッとするもんだ。
今日は午後2時から打ち合わせ。
きのう提出したプロットについてだ。
内容についてはまだ流動的なので、箇条書き風に流れが把握できるような書き方にした。ま、叩き台だ。
キッチリ文章化してしまうと、大きな変更が出たら書き直さなければならず、面倒だから。
話が決まれば文章化するが、特にテンポやリズムに気をつけて書く。だらだら長い文はご法度。
基礎科でもプロット提出の課題があり、その関門を抜けたらシナリオにするというカリキュラム。
生徒たちのシナリオを読むと、プロットの流れそのまんまというモノが多い。
そのために考えたプロットなんだから当然だろう!
でも違うのだ。
プロットはあくまでも指針。
キャラが動き出せば、プロット通りに行かなくなることだってある。プロットにあるたった一行の心理が、シナリオで四苦八苦する。
プロットどおりに書いてつまらないのは、キャラが生きてないから。たった一行の心理を素通りするから。
溜まったメールを読み、リレー日記を書き終わるともう11時。
ここんとこの慌しい流れの中、監督と約束したシナリオには手をつけられず。
もう今月中は到底無理。10月半ばと勝手に締切り延長。
すいません……(涙)
その代わり面白いモノにしますんで。
昔、先輩から聞いた話。「締切りを延ばして許されるのは、面白いホンになる時だけ」……(涙、涙)
11時半に家を出る。
昨日今日明日と三日連続の外出だ。
かみさん、ホントに嬉しそう。
カレー食ってマックでコーヒー飲みながらプロットにもう一度目を通す。ここは突っ込まれるかもな……。対策を考える。そん時はこことここを入れ替え、ここにこれを持ってくれば……ウーム。
でも、概ね間違ってないだろうと思い込む。
午後2時。
時間通りに打ち合わせ始まる。
機械が壊れたとかでコーヒーの代わりにお茶が出る。壊れた……悪い予感。
ズズズッとお茶を啜る。熱い!
いきなり本題には入らない。
まずは参考に見た映画の話から。あそこがオモロイよね、あれはイマイチだよね、ハハハッと笑いながら、いつ斬りこまれるか心は身構えている。
「面白かったです」
ホッとして疲れが一気に抜ける。
「でも……」
やっぱり来たか! でものあとが怖い。
相手の考えを聞く。こっちの弱点を補強するいい考えだ。もっと良くなる。
もう大丈夫だ。
2時間ばかりの打ち合わせが終了。
来月10日にちゃんとしたプロットを提出と決定。やれやれ。これが3稿4稿と続くと泥沼にはまるところだ。
だが喜ぶのは早い。問題は企画会議を通るかどうかだ。こいつが最大の難関なのだ。
映画を見て帰ろう。
帰宅は遅ければ遅いほど、かみさん喜ぶ。
銀座へ出て時間的にぴったりの『幸せの一ページ』にする。
冒頭から睡魔に負ける。ハッと目覚めるともう展開についていけない。南海の孤島に暮らす少女と、外出恐怖症の女がメールのやり取りをしている。
これは何だ?
女は作家らしい。作家が書いている小説の中身が南海の孤島少女なのか?
肝心要のシーンを見逃しているので、もうダメだ。次に目覚めると、遭難したオヤジが生還し、少女と抱き合い、女とやらしい関係に落ちそうな予感でエンドロールが流れる。エーッ、もう終わりか!?
ぐっすり寝ていた自分にあきれる。
でも気持ちよかった……(笑)
2008年9月27日(土曜日)
5時半起床、何となく肌寒い。
そろそろ10月か。短い秋のあとに冬が待っている。暑さで脳はふやけたが夏はいい。短パンとTシャツの身軽さは格別だ。
今日は6時からシナリオ講座の修了式。
基礎科の昼夜間部と研修科の昼夜間部が合同の修了式だから、各科の専任講師の方々、生徒さんたちで教室は満杯だ。
加藤正人学長の挨拶で始まり、専任講師の挨拶へと続く。
高田宏治先生の50年に及ぶシナリオ人生に感嘆の声が上がり、軽妙洒脱なトークに会場がドッと沸く。緊張感が一気にほどける。挨拶とはこうでなくてはいけない。
こっちにマイクが渡される。何か言わなくちゃいけない。プロになるにはとにかく書くこと、書き続けること、その原動力は情熱だ! 硬い。生徒たちがこっちを見ている。講座で揉まれた彼らは先刻ご承知だ。もっと面白おかしく挨拶したかった……(涙)
続いて林誠人先生がマイクを握る。この稼業、頼れるのはたった一人、自分のみ。
友達なんかもいないけど頑張るしかないと生徒を激励。その背中に孤独を見た。
そして桂千穂先生の生徒への叱咤激励。とにかくみんな映画を見なさ過ぎる。
昔と違ってDVDでいくらでも見ることができるんですから、ドンドン見てください。
映画を見なきゃシナリオライターになんかなれません!
プロになりたての頃、桂さんに言われたことがある。シナリオライターになるには、古今東西の映画を見ること、ミステリーを読破すること、文学全集戯曲全集を読破すること。
映画を見まくることだけしか守れなかった。それでも20年以上シナリオで食って来れた。ちゃんと言いつけを守ってれば、今頃はもっと……いや、まだまだ勝負はこれからだ。
最後に大野武雄先生。我がクラスの生徒は全員この場に来ていると嬉しそう。
ホーッと溜息がもれる。提出されたプロット、ハコ書き、シナリオの総数は80本以上だったと報告。会場から拍手が湧く。
たいしたもんだと関心しきり。
すると、うちの生徒が耳元で囁く。先生、うちのクラスは3ヶ月間で60本以上ですよ、と。
うちだって凄いじゃないか!……(笑・笑)
生徒の代表挨拶があって、柏原寛司先生による乾杯の音頭。
全員拍手の中、立食パーティとなった。
4月から始まってアッという間の半年。
色々な可能性がある中、あえてシナリオを選んだ無謀な奴ら、基礎科夜間部に集った40人。
そのうち修了式に顔を見せた者、十数人。
プロットを提出し、2稿3稿と直した生徒たちだ。もちろんシナリオまで進んだ生徒たちもいる。
最後の講義でやっとプロットを出した生徒が一人。講評は修了式のあとの飲み会の席。
約一名、何も出さなかった生徒も来ている。いいじゃないか。その根性を買おうじゃないか。それはそれで立派なもんだ。
途中から姿を見せなくなった生徒たち、今、どんな思いをそれぞれが抱いているのか。
国家試験とは違う。修了証をもらったからプロになれるわけじゃないんだ。
最後はそれぞれの足で踏ん張るっきゃない。
8時からいつもの店で飲み会。
他のクラスも扉の向こう側で盛り上がっている。
今日は林先生の誕生日ということで、生徒がケーキとプレゼントを用意してくれている。林先生、毒舌を吐きながら、少し涙目……。
心優しい生徒たちは、感謝の思いを込めて花束をプレゼントしてくれた。こんなことがあっていいのだろうか。美しい!……(涙・涙)
でも研修科は厳しくすっからね。
11時半。まだ飲み狂っている数人に危険を感じ、逃げるように店を出る。
平日なら間に合う終電車だが、今日は土曜。すでに発車したあと。
がっくり……(涙)
ふと気づく。
アーッ!
真心の花束を忘れてきちゃった。
みんなごめん。
ありがとう。
2008年9月28日(日曜日)
娘は今日も試合だ。
いつもどおり5時半に起き、送る。
午前中、グダグダ寝る。
昼は近所のレストラン。かみさんが友達と良く利用する店らしい。
野菜サラダにドリンク付のランチコース。こっちが四苦八苦してる時、こういうもんを食ってるのか。ふむふむ……(涙)
娘は夏休みも放課後も祝祭日もテニス漬けで学力は急降下。かみさんの怒りが爆発し、その余波をこっちも被る。
内心、いいじゃないかと思う。
面白くて仕方がないテニスを我慢し、勉強して何が残る。
思いっきりやったらいい。でも、少しは勉強してくれ。でないと責任追及の矛先がこっちに……(涙)
我が身を省みると、大声で言えない。
映画ばっか見てた。
その結果、こうなった。
公務員の職を捨てた時の親の顔、今でも忘れない。
娘もまさかプロになるとは言わんだろう。
テニスだぞ、勝ち負けで自分の腕前は知りたくなくともわかるはず。そんなこと余りにも無謀だ。
だけど趣味として一生楽しめる。
それでいいじゃないか。
シナリオはどうだ?
勝ち負けで自分の腕前を知ることなんてできるか?
教室に参加して仲間の意見、講師の講評を聞けばいい。
そしてコンクールに応募することだ。1次、2次、最終選考。どこまで残ったかで凡その判断はつく。目標があれば頑張れるし。
加藤学長から聞いた話。こっちは知らなかったのだが。
昔、何回目かの城戸賞最終選考に加藤正人、金子修介、大川俊道、田部俊行の名前が残った。だが見事入選したのは別の人。その人はプロになら(なれ?)なかった。
落選組は全員プロになり、今も活躍している。
こういうことだってあるのだ。
昨夜の修了式で講座も終わり。と思ってたら、基礎科の流れで研修科夜間部も引き続き担当だ。基礎科の生徒10人以上が持ち上がり(の予定?)。新たに何人かの生徒が加わる。
開講日まで時間がある。それまでに約束のシナリオに目途をつけねば。
最後にかっこつけて映画の話。
タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』という作品。気球に乗ってロシア全土を旅しながら色々なエピソードが綴られる。小難しくてあんまり良く覚えてないが、ラストのエピソードだけは強烈に心に焼きついている。
村に鐘つくりの名人がいて、その息子はいつもホラを吹いている。オイラだって鐘をつくれる。突然名人の父親が死ぬ。王様はホラ吹きの息子に鐘をつくれと命令。できなければ命がない。気も狂わんばかりに動転する息子。誰も助けてくれない。見よう見まねでつくり始める。そして形だけは完成する。だが鳴るかどうかわからない。王様の前でのクライマックス。果たして……。村中に美しい鐘の音が鳴り響く。
あの瞬間の感動が忘れられない。
何があの鐘を鳴らしたのか?
次回からリレー日記を引き継いでくださるのは、荒井晴彦さんです。
まだデビュー前のぺーぺーだった頃、荒井さんは憧れでした。
俺も日活ロマンポルノを書きたかった。デビューで一本書いて沈没したけど……。
荒井さんが初めて声をかけてくれた時のこと、ハッキリ覚えてます。あるお通夜の席で、『泣きぼくろ』の感想を言ってくれました。
講座に伝わる伝説があります。教室に入ってきた荒井先生、生徒に向って「質問あるか?」の一言。何も質問しない生徒たち。そのまま時間だけが過ぎ、その一言で講義は終わったとか。
昔、『シティロード』という雑誌で連載していた荒井さんの日記、楽しみに読んでいたんです。
今回も楽しみにしてますんで、よろしくお願いします。