シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
    岡部優子 (シナリオ作家)

  東京都生まれ。
  シナリオ作家協会通信講座・研修科修了。
  第9回大伴昌司賞佳作奨励賞受賞。
  河出書房新社、筑摩書房で編集の仕事をした後、
  TVアニメ「ちびまる子ちゃん」でデビュー。

  作品に「それいけ!アンパンマン」「ドラえもん」「あたしンち」
  「名探偵コナン」「ぜんまいざむらい」など。
  著書に「ちびまる子ちゃんえほん」(永岡書店)
  「世界名作劇場」(竹書房文庫)
  「カブトムシに会える森」(樹立社)など。


                            


2009年6月1日(月曜日)

ケータイのアラームを朝6:50と7:00にセットしておくんだけど、いつもそれより早く目が覚める。
今日も6:00に起きてしまった。
ちゃんと睡眠とらなきゃと思うのに、仕事が忙しい時ほど早く目が覚めてしまう。
朝ごはん食べて、新聞に目を通して、部屋を片付けて、家の近所を10分くらい、元気出そうな音楽を聴きながら歩いてきた。
仕事にかかる前に、いっぺん外の空気を吸ってこないとどうもダメで、だいたい毎日歩く。
帰って来て、軽くストレッチ。右の肩が凝ってて鈍く痛むので、インドメタシン配合の肩コリ薬を肩甲骨に沿って塗りこんだ。

8:30、仕事開始。
今日はアンパンマンのしめきりなので、昨日までに書いておいた第1稿を印刷して読み直した。
私はパソコンの画面で読んでいるだけだと直すところが見えてこないので、印刷して、声に出して読んでみる。
「ちびまる子ちゃん」だと、たまちゃんの声の真似とか、藤木くんの声の真似とか、野口さんの笑い声の真似とか、一人でやりながら読んだりする。
アンパンマンはもう秋のお話。う〜ん、秋ってどんなだったっけ?
直したいところがいっぱいで、時間がかかってしまった。
私はホント、書くのが遅い。

BDCにダンスのレッスンに出かけた。
シナリオの仕事って、ほっとくと24時間365日、頭の中に仕事のことがある感じになってしまうけど、ダンスのレッスンの時間だけは、気が付くと頭の中から仕事が消えて真っ白になっていて、そういう時間がある方が仕事にもいいみたいで、やめられなくなってしまった。
行かないと肩コリもひどくなっちゃうし。
私が習っているダンスの先生の話は、シナリオの仕事と重なるところがあって、いろいろ気付かされることも多い。
私はよく「力抜いて」って注意される。力を抜くのって難しい。
もともと運動神経ないから下手で恥ずかしいし、いつ引退かって歳なんだけど……。

新型インフルエンザのDVDの2本目「対策編」の構成を考えてハコ書きを書いて、プロデューサーに送った。
たまたま新型インフルエンザのDVDを作っていたら、本当に発生してしまったのだ。
私は途中から加わったのだが、新型インフルエンザのこと何にも知らなかったから、急いで本を読んだりして勉強。

筆不精で、日記なんて子供の頃から続いたためしがないし、メールの文章もいつもそっけないし、この日記も3日坊主になったらど〜しよ……。



2009年6月2日(火曜日)

朝、ベランダで歯磨きをする。気持ちいい。行儀悪いって母に言われるけど。
マンションのすぐ前に桜の木があって、うちは3階なので葉の茂った枝がちょうど目の高さだ。今はちっちゃな赤いサクランボがいっぱいなっている。
朝の木の葉からはなんかいい物質が出てるらしいから、こうしてたらいい物質が体に入って来ないかな。
遠くに緑が見える。ここに越してきた頃はその緑に半分隠れて小さな富士山が見えたんだけど、高い建物が建って見えなくなってしまった。なんかくやしい。

朝からお昼まで、どら焼きを食べながら、ドラえもんの第2稿を書いた。
ドラえもんがどうしても書けなくて「どうしよう〜」――という時は、まず、どら焼きを買ってくるところから始める。ご利益があるかどうかわかんないけど。
今回のは原作があるのだけれど、そのままだと半分くらいにしかならない。
ジャイ子っていうキャラが、わりと普通にいい子なので書くのが難しい。なんか欠点とか弱点とかある方が面白くなるんだけど……。

14:30から、アンパンマンの打合せ。
行く電車の中で、新型インフルエンザのDVDのプロデューサーから携帯メールが来た。昨日送った構成案でいきましょう、とのことで、よかったと思っていたら、続けて、「5日(金)20:30から打合せ可能ですか?」と、メールが来た。「18:00からドラえもんの打合せですが、20:30からでしたら大丈夫だと思います」と、電車の中で返信。中野に着くとすぐ、「それでは5日(金)20:30に」と、お返事が来た。
バスは時間があてにならないので、アンパンマンの打合せの時はいつも中野から新井薬師まで歩く。

打合せが終わって、「じゃあ、次の打合せ、金曜日でいいですか?」と言われて、「大丈夫です」と答えて、外に出てから、「……ってことは、あさって第2稿のしめきりじゃん」と気が付いた。
「いろいろダメなところあったなぁ」とか「あんなこと言わなきゃよかった。気を悪くしたんじゃないかなぁ」とか考えながら、新井薬師から中野までまた歩く。音楽を聴きながら帰ると、いっぱい直しが出ても落ち込みすぎなくてすむ。
帰りの電車の中で、アンパンマンの直しを考えた。忙しくて時間がないから電車の中でやるというわけじゃなくて、なぜか家でやるより電車の中の方が集中できて効率がいいのだ。

今朝、化粧品35%引きって広告が入ってたので、帰りに美白美容液とトイレットペーパーとラップを買って、それから、「6月のお買い得品」の煮物などの食料を買って帰った。忙しい時ほど、帰ってすぐ食べられる物を買ってしまうので、お惣菜の容器とか燃えないゴミが増えて、燃えるゴミが減る。
帰ったら、新型インフルエンザのDVDのプロデューサーから、目を通しておかなければならない原稿が届いていたので、読んで、わかりにくいかも……と思ったところなどをチェックした。
寝る前に軽くストレッチと腹筋。――あ、カレンダー、まだ5月のままだ。



2009年6月3日(水曜日)

朝、5:40に目が覚めた。「昨日、打合せであんなこと言わなきゃよかったな」って、まだ言ってしまった一言が頭の中に残っている。

昨日、送られてきた新型インフルエンザの原稿、気になったところをチェックして書きこんでおいたものを、もう一度読み直してプロデューサーに返信した。

アンパンマンの第1稿を書く時、参考に、TSUTAYAで借りて来たアンパンマンのDVD3枚、今日が返却日だったので、せっかくだから他の作品も全部観た。私がアンパンマンを書き始める前の作品もあって、こんなお話もやってたのか、と勉強になった。
自転車でTSUTAYAに返しに行って、帰りにマツモトキヨシでC1000タケダ・ビタミンレモンを6本まとめて買った。疲れてるけど頑張って書かなきゃ……って時はこれを飲む。実は今朝も1本飲んでしまった。結構、どんどんなくなる。

帰って来て、かた焼きせんべい1枚食べながら、アンパンマンの第2稿を書いた。かたいもの噛んだら脳が動くかな〜と……。
「だめだっ、アンパンマンが書けない! どうしよう〜」――って時は、アンパンマンのエンディングテーマを歌うとよい。「もし自信をなくして くじけそうになったら いいことだけ いいことだけ 思い出せ……」気持ちが弱くなっている時は、この歌詞が結構泣けたりする。
昨日、電車の中で考えておいた直し、打ってみたら長すぎて削るのにひと苦労。こういう時は、改行するのをやめたり、かなを漢字にしたり、「ジャムおじさん」と書いていたところを「ジャム」にしたり、姑息な手段を細かく使ってなんとか行を減らす。何の解決にもなってないんだけど。

メールチェックしたら、金曜日の新型インフルエンザのDVDの打合せは延期とのこと。
楽しみにしていた映画の脚本が届いて、午後、眠かったのが元気になった。
夜、映画の脚本を読む。



2009年6月4日(木曜日)


変な夢を見た。目が覚めたとたん、みるみる忘れてしまって、もう変な夢としか書けない。私の知識と想像力の範囲外みたいな夢だったけれど、私の頭の中で作り出したものなんだよなぁ。でも、気持ちのいい夢じゃなかったので、なんだか疲れていた。
昨夜はカモミールティーを飲んで、水の流れる音のCDを聴きながら寝たから、心地よく眠ったはずなんだけど……。音楽の入っていない、せせらぎの音のCD。眠れない時もこのCDを聴きながらだと、いつの間にか眠っている。

アンパンマンの第2稿を印刷して、読んで、ちょっと直してメールで送った。
ドラえもんも送らなきゃならないのだけど、すぐにやるとちゃんとねばって考えて直せなさそうなので、洗濯機を回して、アンパンマンの第1稿を書いた時に資料として図書館で借りてきた子供向けの本をパラパラ読んだ。それでもやっぱり外の空気を吸ってきたい気がしたので、本を近所の図書返却ポストに返しに行って、気持ちに区切りを付けて、次に取りかかることにした。

ドラえもんの第2稿を印刷して、読んで、ちょっと直してメールで送った。
どの作品もそうだが、何度も読んでいると、面白いのかどうかだんだん自分でもわからなくなってくる。

シナリオ作家協会の広報委員会のメールが、昨日と今日、届いていた。広報委員、4年間やらせていただいたので、今期はやめさせていただくことにしたのだけど、メールを見てちょっぴりさみしい気持ちがした。「広報委員会のメールの配信を止めてよろしいでしょうか?」とのメールに、「結構です」と返信。

アンパンマンから、「明日の打合せ15:00から」とのお電話があった。ケータイのアラームを出かける1時間前にセットしておく。

新型インフルエンザのDVDのプロデューサーから、完成形に近づいた「脅威編」の画像が送られてきた。見ると、変更がなかった部分は、先日、私が仮に声を入れたナレーションがそのまま使われていた。げっ、私の声ってこんな声なんだ……。自分で聞くとメチャクチャ恥ずかしい。

昨日読んだ映画の脚本の原作を改めて読み返した。
寝る前にストレッチと腹筋――っと言ってもほんのちょっとなんだけど、これやらないとなんか一日が終われなくなっている。



2009年6月5日(金曜日)

ご著書を送ってくださった方に、遅くなったが、お礼のメールを送った。本のタイトルは、『ことばを深呼吸』。シナリオを書く時にも役に立つことがいろいろと書かれていた。ダンスのために体のストレッチをしているだけじゃなくて、言葉を書くために頭のストレッチもしなきゃ、と考えさせられた。私の頭は固まってしまって動かないことがよくある。

編集者の方とお電話。会社をやめてデビューして何年間かシナリオだけじゃ食べていけなかった時、出版社の編集や校正の仕事をさせてくださったり、長年にわたって大変お世話になっている方だ。具合が悪かったそうで、ちょっと心配。

午後、打合せに出かけた。八百屋さんの前を通ったらカボチャが安かった。六本木までカボチャさげていくわけにもなぁ……重いし。電車の時間、ギリギリだし。あきらめて小走りに駅へ向かった。

15:00から、アンパンマンの打合せ。シナリオ第2稿については大きな直しではなかったので、早めに直して第3稿をお送りすることになった。それから前に出しておいた次のプロットについて、ご意見をうかがって、いくつかの問題点についてどうしようか考えて、来週金曜日の打合せまでにシナリオ第1稿を書くことになった。
終わって新宿に出て、ちょっと時間があったので、ヨドバシカメラでプリンターのインクを買って、チャコットで新しいジャズダンスシューズを買った。今、履いているのはもう底がすりへって中敷きがはがれてしまったのだ。大江戸線で六本木へ――。

18:00から、ドラえもんの打合せ。やはり問題はジャイ子のキャラをどうするか、だった。

打合せがつづいて、どの打合せでも直しがいろいろと出ると、大学4年の時に就職活動で面接に落ち続けた時と同じような、「自分はダメだ〜」という気持ちになる。
なかなかまっすぐは帰れなくて、本屋に寄って、スーパーに寄って、コンビニに寄った。
こういう時は下手すると過食しかねないので、ファミリーマートでカロリーゼロの寒天のオレンジ味とブドウ味、二つ買って帰った。
帰宅して、野菜とお豆腐で遅い夕食。寒天は寝るまでに二つとも食べてしまった。



2009年6月6日(土曜日)


昨夜はめずらしく夜中1時過ぎまでパソコンを打っていたので、アラームが鳴る前に目が覚めてテレビをつけたのに、その後ちょっとトロトロしたみたい。テレビの画面の時刻を見たら、いつのまにか7:26になっていた。
玄関を出たら、雨。雨の日は気持ちがどんよりして、仕事やる気出ない。歩き出すと、なんだか体がガタガタしてうまく歩けなかった。朝、歩くと、「今日は体が変だなー」とか自分の体の調子がわかる。
手紙を1通、書いてから、コンビニに宅配便を出しに行った。ついでにコンビニで、私の仕事やる気出す食べ物の一つである“すあま”を買おうと思ったら売り切れだったので、近くのスーパーまで“すあま”を買いに行った。スーパーから出たら雨が上がって明るくなっていて、不思議にやる気が出て来たので、帰ってアンパンマンの直しをやった。
直しの箇所がちょっとだけの時も、どうも全部読んでからじゃないと送れない。最初からまた全部声に出して読んでみて、それから第3稿をメールで送った。

ダンスのレッスンに出かけた。忙しい時は週に1回しか行けなかったり、2週間ぐらい行けない時もあるのだが、週に2回ぐらい行かないと体が動かない。
この歳になると、“跳ぶ”という動作が非常にキツイ。日常生活で跳ぶことなんてなかなかないもんなぁ。一生懸命跳んでいるつもりでも、鏡を見ると情けないくらい低くしか跳べてない。先生は「ずっと上にいるつもりで跳べ!」と言う。え〜、そんなぁ〜。

帰って来て、テレビで「名探偵コナン」を見た。以前、書かせていただいたことがあって、プロフィールにも書いてしまったが、実を言うと1本しか書けなかったので、なんとかまた書かせていただけるようになりたくて、放映は毎週欠かさず見ている。ときどき原作を読み直して勉強したりもしているのだが、いまだに書けていない。
子供の頃、「ドカベン」の里中君のファンで、アニメの「ドカベン」の里中君の声は神谷明さんだった。「コナン」の毛利小五郎の声も神谷明さんだ。「コナン」を書いた時、「私が書いたセリフを神谷明さんに読んでもらえる!」と思ったのだが、書いた作品は毛利小五郎が出てこない話になってしまった。なんとか毛利小五郎が出てくる話が書けるまでチャレンジしたいなぁ。

先日、ちびまる子ちゃんの11月〜12月用のアイデアを送った。「今週末に連絡します」ってちゃんとメールをいただいているのに、木曜日辺りから「やっぱりダメだったかな……」って不安になっている。アイデア出しは苦手だ。いつもなかなか通らない。

ドラえもんの直しに取りかかった。思い浮かんだまま書き直したセリフを打ってみたら、ペラ4枚分も長すぎた。もう一度、この作品の原作に立ち返って考えてみる。子供向けで面白く笑えるお話なのだが、大衆心理をも表していて、深い。



2009年6月7日(日曜日)

朝、いい天気だったので、洗濯をしてお布団を干して、掃除までしてしまった。
ベランダの植木鉢は、ある年、「水やらなきゃな〜」「水やらなきゃな〜」「水やらなきゃな〜」……と気になりながらずっとやらずにいたら、ほとんどが枯れてしまった。土に種が混ざっていたのか、芽を出したスミレの葉っぱが、今年はシソの葉みたいにでっかくなっている。
今日は暑い。半袖のTシャツを着て、髪をゴムでハーフアップにして、仕事を始めた。家ではいつもほとんど部活みたいな格好で書いている。

言葉を選びながら長かった分を切って、ドラえもんの直しを終わらせた。今度こそ大丈夫だといいな……。
打合せの時、原作に出てくるオモチャを、今、流行りのオモチャに変えようという話をしていたので、なんかないかな〜と「小学三年生」という雑誌をパラパラ見てみたら、原作に出てくるのと同じオモチャが載っていた。へえ、今でもあるんだ。今度の打合せの時にこの雑誌持ってってみようっと。
スーパーボールを足の裏でコロコロと転がす。ツボが押されて気持ちがいい。すぐに次の仕事にかかればいいのに、図書館で借りた仕事とは関係ない児童書がどうしても読みたくなって、ついつい読んでしまって、図書返却ポストに返しに行った。

アンパンマンの次の第1稿に取りかかるために、まずは今度の作品と同じキャラクターが出てくる、以前の作品のDVDを見て、シナリオを読んで、どんな性格のキャラクターで、舞台になる場所がどんなところなのかを確認した。
アンパンマンは、自分の書いたものだけでなく、他のシナリオライターの方々が書かれた作品の印刷・製本されたシナリオも送ってくれるので、何冊あるか数えたことはないが、かなりの冊数のシナリオが玄関の棚に並んでいる。ちょっと前までは山のようにただ雑然と積み上げていたので、読みたいシナリオが下の方にある時は山を崩しては積み直さなきゃならなくて、そのたびにひと仕事だったのだが、最近になってやっと横に並べたのでとっても楽になった。もっと早く片付ければよかった……。

夕方、ちびまる子ちゃんの自分のシナリオのオンエアを見た。
6月ということでサクランボの話を書いた。
実は、太宰治の小説から思い付いたのだけれど、ホントにしょーもない話を書いたので、誰も太宰と関係があるとは思わないだろうなぁ。
「面白かった」と、父。一応、アニメの監督なんだから、もうちょっと具体的にいろいろ教えてくれればいいのに、いつもほとんど言わない。


――リレー日記、一週間、お読みいただき、ありがとうございました。


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