2010年2月23日(火曜日)
映画『ちょんまげぷりん』撮影18日目
今日も朝から都内某所のスーパー近辺で撮影。
僕の送り迎えをしてくれる(って決まり事じゃないんだけど)スチールカメラマンのツッチー(女性)は、『ルート225』という映画の時からだから五年もの付き合いなんだけど、お互い何度引っ越ししても意図せずして近所で、なぜかスチール兼監督車ドライバーというポジションにされている。
最近エアコンの送風口が異様に臭いんだけど文句を言っても何ら対処はしてくれず、「嫌なら乗らないでいいですよ」が口癖なんだけど、こんな早朝深夜の毎日の送り迎え、本当に感謝しております。
クランクイン初日にタクシーで現場に来た僕の前を、涼しい顔でマイカーに乗って通り過ぎた時は本当にカチンときたけど、感謝してます。
「徹夜の本ナイター(夜に夜のシーンを撮る)なのに早朝開始かよ!」
とチーフ助監督のヒラさんに文句を言うが「僕がチーフの場合はこうです!」と一蹴される。
このヒラさんも『ルート225』からの付き合いなのだが、組むとなぜか、ヒラさんが「やってください」と言い、僕らが「ああ、はいはい、わかりました・・・」と嫌々やる感じの、「ヒラさんにやらされる」感になるので、おかしいし、心地いい。
もちろん嫌々撮影などするわけがない。
昼前、ちょっとうまくいかなくなって、
「五歳の子供がこんなに頑張ってんのに、あんた何やってんだ!?」
と思う瞬間があった。
子役の福ちゃんはそれはもう本当に涙ぐましいほどに頑張ってくれている。
夕方。夕景の大東京を見る安兵衛さん、というシーン、これが太陽の具合も相まってまたしても強いシーンになった。
そして本ナイター。
スーパーの周りは照明部の煌々とはなったライトに引き寄せられるように、近隣の自転車中学生たちが大挙して押し寄せ(エキストラではない)、さながら祭りのようであったが、芝居を始めた九時以降はなぜか静かになって(ってその裏で製作部が頑張ってるんだけど)、粛々と撮影。
スケジュール後半に組まれた「三大仕掛シーン」の一つ(残りはケーキ大会と、殺陣)。
ほぼラストシーンなので内容は書けないが、合成が多く入る予定で、そのぶん芝居はしづらい。
しかし、昨日も書いたが、錦戸くんの芝居がすごくなっている。
錦戸くんの「こうあるべし」と思う安兵衛が出来上がってきているので、こちらはどんどん楽になるばかり。
ともさかさんについては元から楽をさせて頂いているのだが、やはり今夜も楽であった。
ていうか、ほんのちょい演出すると百倍返しぐらいの芝居になってくるのでたまらない。
そして今日もまた泣いていた。頭が下がる。
そんななかまた福ちゃん五歳児もよく頑張った!
抱き上げてぐりぐり頬ずりしたいぐらいだが変態と思われるのでやめておく。
毎日毎日、うまくいっている。
「いやー、うまくいってるよねー」と記録のカナエにボソッと言う。
そういやこのカナエも『ルート225』からだ。
ツッチー車にて帰宅。
風呂に入って(湯船は必須)、7時半、気絶。
2010年2月24日(水曜日)
起きたら7時半。て夜の。
暗くてびっくりした。子供か俺は。
12時間も寝てしまった。
愕然とする。
撮影が始まると、最初の4日間ぐらいはしんどいが、いつのまにか身体が4時間、5時間という睡眠時間に慣れ、自然と起きるようになる、
と昨日の日記に書こうと思っていたけど書かなくてよかった。
いくらでも寝れます。
今日は撮影はない。
しかし「撮休」ではない。
昨日書いたヒラさんだが、彼は『アヒルと鴨のコインロッカー』でもチーフ助監督をやってくれていて、昼撮影〜そのまま夜も撮影〜朝を迎えて撮影がない場合、スケジュール表に堂々と「撮休」と書いていて、朝ホテルに戻ったら(ほぼ全編地方ロケだった)気絶するように寝て、夕方起きたらもう何もすることがなくてまた寝るしかなく、何週間か経ったころ、スタッフの一人が「これは撮休じゃない」と気づき、暴動になりかけたことがある。
その後そういった日は「ニセの撮休」と言われ始め、ヒラさんのスケジュール表にも「撮休」とカウントされることなく、「諸準備」もしくは「前日の残」などと書かれるようになった。
一度ナイターが深夜12時前に終わったことがあり、
「明日は撮休です! 断じて撮休です!ニセとかそういうのではなくて、撮休です!」
と大声で叫ぶヒラさんの姿がたいへん印象深い。
近所の中華屋で排骨麺を食べる。
ブログをやってる方ならこういった時に排骨麺の写真がそえてあったりするんだろうな、と食べながら思った。
2010年2月25日(木曜日)
映画『ちょんまげぷりん』撮影20日目。
とはいえ午前中は東宝撮影所の仕上げセンターにて、安兵衛こと錦戸くんのモノローグ録り。
劇中に何度か安兵衛の心の声(というか、家事やスイーツ作りを始めた安兵衛が書き留めたメモ、という設定)が入るのだが、その声録り。一つ例を挙げれば、
「やむをえず外出する折は、予約たいまーを活用すべし」
みたいな感じ。
この部分の脚本を書いていて、ふと『刑務所の中』のモノローグを思い出したりした。
「パジャマも、四角にすれば皆にほめられるのだった」とか。
「ぼく、カツゼツ悪いんすよー」
「息、続かないんすよー」
とはいうものの、なかなか渋いっす、錦戸くんの声。
毎度のことながら「やるなあ」と思う。
午後はセットにて一昨日撮った分に重ねる合成部分の撮影。
さっき覗いたともさかさんのブログにも書いてあったけど、福ちゃんの替え歌やらでゲラゲラ笑ってる間に終了。
とはいえ、お芝居(申し訳ないが一昨日と全く同じことをしてもらう)は、錦戸、ともさか、福、三人とも役が身体に入り込んでるのと、ものすごい集中力で、スイッチオンでいきなりトップギアな感じに仕上がってるからあとは撮影部&合成部の微調整を待つばかりな現場だった。
楽だ・・・。申し訳ないぐらい楽。
キャストもスタッフも優秀過ぎる。
その他、桜、雪、などの合成素材撮りは残っているものの、監督なんて俳優部がいないとほとんど御役御免だから、カメラマンのゲンさんに任せて(初めて組むけど、もう全幅の信頼感)ラインプロデューサーのワカと、未定な現場のロケハンに出る。
チーフのヒラさんとワカは、一昨日の貫徹のあと、(つまり僕が12時間寝てる頃)なんとロケハンに回っていたらしい。
なんて無尽蔵な体力なんでしょう。
その甲斐あってか一発オッケー。
ラスト間際の甘い雰囲気を出したかったのに申し分ないのと、自分好みのくるむような空間(伊丹さんの受け売り)だった。
そんなこんなで本日終了。
なんか真面目に撮影日誌書いちゃってるなあ、と思う。
2010年2月26日(金曜日)
今日は撮休。
正真正銘の撮休。
昨夜、殺陣シーンのロケ現場の横のマンションで塗装工事が始まって塗装シートみたいなのに覆われてしまったがどうしましょう?
という連絡がヒラさん&製作部から入って、では明日確認に行きましょうかという段取になっていたが、今朝、自宅近くのコンビニにヒラさんと製作部のマトバが来てくれて、写真判定で問題無しと判断。ロケハンは中止となる。
ていうか、コンビニにスエット(上)に手ぶらで現れた僕を見て、「行く気ないでしょう?」と笑うヒラさんはやはり鋭い。
近所のファミレスでクランクアップまでのカット割をする。
気づけばあと10日ほど。
そしてデカいヤマが二つ待ち構えている。
助監督のイワツボ(女性・無愛想・初対面よりは明るくなった)からケーキコンテストシーンについて予習するよう資料を託されているが、今日中に全てを把握する自信はまるでない。
帰宅するとアマゾンで大人買いしたDVD『必殺商売人』が届く。
思えば昨年秋口から『必殺仕置人』(中村主水初登場。傑作!)、『暗闇仕留人』(石坂浩二渋い。傑作!)、『必殺仕置屋稼業』(沖雅也かっこいい。傑作!)、『必殺仕業人』(大出俊憎らしい。傑作!)、『新必殺仕置人』(山崎努壮絶。大傑作!)と、必殺シリーズの中村主水登場シリーズだけ毎夜1〜3話ずつ、『ちゃんまげぷりん』は半分時代劇みたいなもんだから、と理由付けして、鑑賞し続けてきたのだった。
そんな中、その中村主水役・藤田まことさんがお亡くなりになられた。
あー。もっと主水を観たかった・・・。
そして、一度お仕事したかった・・・。
それにしても、何度観ても『新仕置』(とファンは呼ぶ)の最終回はすごい。
で、その後の主水と正八(火野正平)はどうなったのか、というのが今日届いた『必殺商売人』なんだけど、うあー、観てーなあ!
ぐっと堪えてケーキの勉強をする。
それと5月に東京学生映画祭の審査員というのを引き受けていて、そのアンケート取材の〆切りが月末なんだけど、今日やるしかないからやる。
「中村監督が師匠の崔洋一監督と知り合われたのは当映画祭らしいのですが、それは本当ですか?」
みたいな質問に意外と丁寧に答えていたらえらい時間が経ち、慌てて寝る準備をしつつこのブログを書く。
明日は四時起きだ!
2010年2月27日(土曜日)
映画『ちゃんまげぷりん』撮影22日目
今日の一日は長かった・・・。
四時起きで早朝限定の現場一個やって移動して、本来の予定プラス急きょワンシーン追加したり、午前中は雨だからとあきらめて後日に回していたシーンを晴れたからって急にやったりで、シーン数で言ったら8個!
終了23時15分。
よく皆さん文句の一つも言わずに働いてくれるものです。
ありがとう!
それにしても芝居って本当にナマモノ。
編集の段になってNGにしていたテイク1を試しに見直してみたらこれが結局一番生々しくてよかったりする、なんてことはこれまで何度もあったんだけど、現場でそれを考えながらどこで、では本番! といくか、という計算は本当に難しくて、その理由は一つのシーンに俳優が一人なんてことはあまりなく、すでに仕上がってる俳優とまだまだ要調整な俳優がいるからで(俳優だけではない。それはスタッフの一部門だったりもする)、だらだらテストを繰り返すと仕上がってる方の芝居がダレていくし、見切りスタートに賭けるとやっぱり要調整の人が力不足だったり、この見極めこそが自分の仕事の神経の使いどころであり、映画はライブ、と言われるところの面白さでもある。
そんななか、錦戸&ともさか&福の安定感たらどうよ!
しかも一つ一つのテイクで相手のニュアンスによってこちらのニュアンスも変わるという、ナマモノのお芝居までこなしてらっしゃる。
素晴らしい現場になってまいりました。
明日もまた東京マラソンのなか早くから撮影。
寝ますよ。
そういえばこの日記、引き受ける時に、撮影中なので三行ぐらいしか書けませんよと言ったらそれでもOKとのことだったので、もう寝ます!
もう一つ、そういえばこの日記、
公開中の『ゴールデンスランバー』について全然書いてない。
映画の自由、みたいなものを考えて撮った映画です!
是非皆様お見逃しなきよう!
2010年2月28日(日曜日)
映画『ちょんまげぷりん』撮影23日目。
ち「ゃ」んまげ、ではなく、ち「ょ」んまげ。
多くの方に指摘されました。
まげちゃん、を業界用語で言ってるわけでもなく、ちょんまげ、です。
今日は天気との戦い。
結果から言うと勝利だが、僅差の勝ちって感じ。
理想は一日中晴天だが、いきなり朝から雨。
窓向けではない室内カットから攻めて、午後からの晴れで一気に挽回していく。
この辺はさすがに撮影23日目のチーム、「戦闘モード」みたいになると歯車ががっちりハマる。
日没まであきらめず時間一杯使って本日のスケジュール全て消化して終了17時半。
うちの組だけではないと思うのだが、なぜか天気を司る担当、みたいなのがチーフ助監督で、うちの場合はつまり何度も書いている、ヒラさん。
天気を司るっていっても相手が天空なわけだから、何ら交渉も操作もできるわけがないのに、朝一から皆ヒラさんに「雨じゃないかよ!」と絡む、絡む。
完全に味方のはずのセカンド助監督のダンにまで言われている。
まあ先駆けは僕ですけど。
最近ヒラさんは天空に対し、「願うと叶わない」というジンクスを見つけたらしく(というか「強く願い過ぎるのが天空にバレる」みたいな感じ)、午後から曇りの予報に対しても「まあ止むとは思うんですけど、どうですかねえ・・・」と芝居がかった弱気を見せる。対、天空として。
で、雨が止んで奇跡的に雲一つない晴天になってからも、一人いつまでもカッパを着たままだ。
天空に「上から見られてる」感じで、「雨を願ってるふりをしている」らしい。
そんなヒラさんのもとで我々は日々撮影させて頂いております。
ありがとうございます。
日記も今日が最後。
やはりなかなかしんどかった。
コメントを書いてくれた方々の中に、これからブログやられたらいかがでしょうみたいなご意見がいくつかありましたがやはりちょっとしんどいですね。
それと、たかだか日記にしたって一つの表現なわけですから何かしら工夫して頑張ってしまうわけです(寝たいのに)。
まあ、僕は、頑張るのは現場だけでいいかな、と。
お。
今の、なんかカッコイイ締めの文句っぽかったですね。
そういえば今日、スチール兼監督車ドライバーのツッチーは現場に遅れて来たんですが(僕は東京マラソンの道路規制を危惧して電車で行きました)、規制、規制で遅刻しそうになってうっかり右折禁止を曲がったらパトカーに停められて逆ギレしたら交番に連れてかれて
40分間説教されて大泣きしたらしいです。