柏原寛司
(シナリオ作家・映画監督・社団法人シナリオ作家協会会長)
社団法人シナリオ作家協会 会長。
1949年生まれ。東京都出身。シナリオ研究所22期修了。
日本大学芸術学部文芸学科卒業。在学中に東宝撮影所に
アルバイトとして入り、「クレクレタコラ」で脚本と助監督を経験。
1974年「傷だらけの天使」で脚本家として本格的にデビュー。
50期研修科夜間部専任講師。
■映画
「STRAIGHT TO HEAVEN〜天国へまっしぐら」
「名探偵コナン 紺碧の館」「ゴジラvsスペースゴジラ」
「あぶない刑事シリーズ」「ルパン三世DEAD OR ALIVE」 他
■TV
「名探偵コナン」「警視-K」「豆腐屋直次郎の裏の顔」
「プロハンター」「刑事貴族」「ルパン三世」「あぶない刑事」
「ベイシティ刑事」「キャッツ・アイ」「ザ・ハングマンU」「西部警察」
「探偵物語」「大都会」「大追跡」「俺たちの朝」「太陽にほえろ!」 他
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2008年7月7日(月曜日)
国語が2だったのに間違ってライターになってしまった柏原です。
てな訳で、日記なんてモンは苦痛以外のなにものでもなく、シナリオだって書きたくないのに、なんで日記まで書かなきゃいけねーのかと思いつつ、まあ、なんとか一週間乗り切ってみようと思う。今日は『アフタースクール』と『JUNO』をハシゴした。
シナリオ誌で今年から『柏原寛司の映画館へ逝こう』――じゃなかった、『―映画館へ行こう』という連載をしているので、そのためなのだが――って、急に話は変わるが、自分は誤字脱字が圧倒的に多いライターなのである。
今は気づいたから『逝こう』を『行こう』に直したが、こういう思い込みの変換ミスが実に多い。ワープロは使用頻度が高いと、それがまず最初に出てくるからである。
『けっこん』と打って変換すると、自分の場合まず『血痕』が出る。間違っても『結婚』とは出てこない。
『だんそう』と打つと、まず『弾倉』が出てきて、次に『断層』、そして『男装』と出る。
自分が書くシナリオの95%以上に銃が出てきて、主人公の90%以上が銃を撃ちまくって、99%の作品に死体が登場するからだ。
こんな事だからNHKから声がかかる訳がない。
同い年の金子成人とはエライ違いである。
これ読んでるNHKのヒト――って、読んでる訳ないか――ま、いいや――自分だって銃を撃つのが好きな訳じゃあないのだ。
よく勘違いするヤツがいて、自分が本当に銃好きの乱暴者だと思っているらしいのだが、そんな事はまったくない。仕事だからしかたなく、嫌々書いているだけなのである。
そりゃ、年に数回GUAM島へ行って実銃を撃ったりもするが、それはあくまでも取材であるし、たまには気にくわない野郎に声を荒らげる事もあるが、そんなにしょっちゅうある事ではなく、2日に1回ぐらいのことなのだ。
いかんいかん、思わず話が逸れてしまったので、もとに戻す。
いま巷で評判の良い『アスタースクール』と『JUNO』であるが、さて対談でどういうことになるやら楽しみだ。
対談の相手は『呪怨』の監督である清水崇氏である。
2008年7月8日(火曜日)今夜から武藤将吾さんが脚本を書いているフジテレビの新番組『シバトラ』がはじまった。
武藤さんは以前、私のクラスで生徒をしていたことがある。
武藤さんの他にも、米村正二さんとか藤田伸三さん、横谷昌宏さん、渡辺典子さん、野坂直代さん、福嶋幸典さん、千島桃子さん、旺季志ずかさん、渡辺美穂子さん、緒方彩子さん、津村美智子さん、安部陽子さん、村川康敏さん、谷口晃さん――他にも結構いるが、書くのが面倒になってきた――というシナリオライターたちが、私のクラスで生徒をしていたことがある。
この時期になると、彼ら、彼女らの事を思う。
テレビ、映画、アニメなどでみんなの名前を見るにつけ、本当に元気なのだろうか、と心配になるのだ。
もし元気なら、中元のひとつも贈って来るはずではないのか。
誰も贈って来ないんだよな、今年も。
シナリオ講座の頃とは違うので、
「馬鹿野郎、武藤。中元ぐらい持って来い!」
「村川! 女紹介しろ!」
などとはとても言えないのだ。
なんせ、もう向こうの方が大先生なのである。
これだけ書けば、誰か中元を贈ってきてもいいものだが、きっと誰も贈って来ないだろう。
まったく冷たいヤツらだ。
今年、誰からも中元が来なかったら講師をやめてやる。
2008年7月9日(水曜日)
そろそろ仕事をしないとヤバイのだが、髪の毛が伸びちまって気持ちが悪いので、近所の床屋に行った。
生まれてこのかた、ずっと同じ所に住んでいると、ダチや知り合いが至近距離にゴロゴロいる。レストランをやっているヤツもいれば、居酒屋のヤツもいるし、文房具屋も花屋もいる。
どうせ金を落とすならダチの所にしてやろう、と思っている。で、必ず中学の同級生がやっている床屋へ行くのだが、困ったことに、こいつが宗教をやっているのである。
アタマをあたってもらっている間、ずっと宗教の話を聞かされるのだ。
パッパとやれば1時間で終わるのに、話ばかりしてやがるモンだから1時間半くらいかかってしまうのである。
奇跡の話だとか、ありがたい教え――こっちにとってはありがたくも何ともないのだが――を聞かされ、午前中が終わっちまった。気を取り直して午後から仕事をはじめよう思ったのだが、シナリオ誌の対談用に映画を観ておかなくちゃいけない事に気づき、我がシナリオ講座の学長・加藤正人が脚本を書いている『クライマーズ・ハイ』を観にいった。
来月の対談ではシナリオ作家協会の西岡琢也理事長がホンを書いた『火垂るの墓』、加藤正人会長が書いた『クライマーズ・ハイ』という、作協の2大エライ人の映画をけなしまくってやろうと思っているからだ。
『クライマーズ・ハイ』のモデルになった日航機事故の時、ちょうどニューヨークにいた。
「ニューヨークで書いてくるから」
と、プロデューサーに嘘八百言って、書いてる途中の『誇りの報酬』という日テレの番組の原稿を持ったまま、アメリカへ遊びに行っちまったのである。
まずニューヨークに入って、ボストン、バッファロー、ニューオーリンズ、マイアミ、キーウェストと回って、またニューヨークに戻ってきた時、日航機のニュースをテレビで見た。
誰か知り合いが乗っているかも知れないと思い、グリニッジビレッジの寿司屋に通って、数日遅れで来る新聞を読んだものである。
加藤会長の映画で午後が潰れてしまい、夜に仕事をしようと思った所、はたと気がついた。
昨日書いたブログのことである。
誰も中元を贈って来ないと書いたが、そういえば、ヨネ(米村)のカミサンがあんみつを贈ってくれていた。それに、野坂も甘いモンの詰め合わせを贈ってきてくれた。武藤も本人が書いた映画『クローズ ZERO』のDVDをプレゼントしてくれていた。
いやー、最近ボケが来てしまって困ったモンだ。
もう今日は寝て、明日から仕事をすることにしよう。
2008年7月10日(木曜日)
今日からマジメに仕事にかかる。
――と、思っていた所、横浜からTとMというコンビがやってきた。
自分はこの2人をやたらと殺している。
以前、丸山昇一氏に、
「柏原さんが書いたヤツは脚本のタイトルを観なくてもすぐ判りますよ」
と、言われた事があった。
これは褒め言葉でもなんでもなく、作品の中に出てくる人物の名前が、同じだからなのである。
登場人物の名前を考えるのはホントに面倒で、ライターそれぞれが苦労している。
佐治乾さんなんかは、アイウエオ順に名前をつけていく、と言っていた。
自分はダチや知人の名前を使うことが圧倒的に多く、中学シリーズ、高校シリーズ、ご近所シリーズなどがある。
その中でもTとMは一番多く使っている名前で、数十回は殺している。
その2人がなぜハマからやって来たかというと、ウチのビルの地下の件であった。
30年以上入っていた居酒屋が去年で出ていったので、空いた地下をどう有効利用するかを考えているのである。
怪しげな地下室なので、順当に考えればキャバレーか地下の射撃場にするのがいいのだろうが、私はシナリオ作家協会の理事をやっているので、そういう訳にもいかない。文化芸術に貢献する者が、そんな反社会的なことをしてはいけないのである。
以前、GUAMへ実弾射撃ツアーに行っただけで、作協のエライ人たちから怒られた経験がある。
TとMとの打合せ、メシ、コーヒーなどで夕方まで潰れてしまい、そのあと浅草のほおずき市へ行った。
何しろ、今日お参りすれば四万六千日参拝したのと同じことになるのだから、モノグサとしては外せない行事なのである。
今日も一日疲れたんで、もう寝る。
2008年7月11日(金曜日)
仕事をサボりすぎてしまい――って、毎度のことなのだが――、準備不足のまま打合せをする事になってしまった。
内容は××と××××を舞台にした×××××物で、×××・××××物でもある。
監督は×××氏でシナリオ講座で自分の生徒だった××××ちゃんと共作することになった。
――と、書いても××が多すぎて判んねえよな。
ま、とにかく2時間半ばかり、ライター、プロデローサー、監督それぞれが持ち寄ったアイデアを検討して、次回は我々ライターがラフな流れを作って来ることで切り抜けた。
まあ、準備不足の割にはよく頑張った方である。
某監督のための映画とか、自分が撮るヤツとかいろいろ仕事が溜まってしまっているので、今年の後半はマジに仕事をしなくちゃならない。
こうなったら講座の授業はテキトーにやって、仕事に専念することにしよう。
このブログで中元を贈ってこない、と書いたら、早速2人から中元が贈られてきた。
冗談で言ってるんだからね。
だいたい嘘八百言いまくってるのがライターなんだからな。
もう贈って来なくていいぜ。
どうせ贈ってくれるなら歳暮にしてな。
2008年7月12日(土曜日)
明日、来月号のシナリオ誌の対談があるので、それように『火垂るの墓』を観に行った。
対談で取り上げる映画は『クライマーズ・ハイ』『カメレオン』『アフタースクール』『火垂るの墓』『片腕マシンガール』、そして『JUNO』である。
毎月、対談用に日本映画を多く観なければならず、その分、アメリカ映画を見る本数が減って苛ついてくる。好きな女に逢えなくてイライラするのと一緒で、逢ったからといっていい事ばかりではなく、こっぴどく裏切られたりもするのに、暫く経つとまた逢いたくなるのである。
これから秋にかけては『ウォンテッド』『ダークナイト』などが、今すぐにでも逢いたくなるいい女という訳だ。
今年の2月にGUAMへ行った時、向こうのシネコンでこの2作の予告編を観て、一目惚れしてしまった。
GUAMは銃を撃つだけではなく、映画を見るのにもいい場所なのである。
話は変わるが、去年、自分が監督した『STRAIGHT TO HEAVEN〜天国へまっしぐら〜』が、いまこういう展開になってきている。
http://www.newyork-tokyo.com/wp/nytfgp-2008-action/
映画は生きものだ。
2008年7月13日(日曜日)
シナリオ誌の対談を終え、いま八ヶ岳に来ている。
ここにアジトを構えたのは、草刈正雄、藤竜也主演の『プロハンター』を書き終えた頃である。
もともと西部劇ファンで、海よりも山が好きだったから、アジトの場所として八ヶ岳を選んだ。
籠もって書くだけではなく、ゴルフやスキー、サバイバル・ゲームなんかも出来て、1年中楽しめる。東京から2時間ほどで行けるというアクセスも気に入っている。
造った当初は頻繁に来ていたが、さすがに最近ではそんなに利用しなくなったので、管理を彼に頼んでいる。
彼は保安官をやっていたこともあり、安心して任せられる。
八ヶ岳アジトには、シナリオ講座の生徒たちもよく連れて来ている。
合宿や企画を練る時に使ったり、雑草が伸びてくると、その時の生徒を連れてきては草刈りをやっているのだ。
ここへ連れてきた生徒たちは、なぜかプロになる確率が高い。
初日のブログに書いた連中はみんな八ヶ岳アジトに来ているはずだ。
明日からブログを担当する藤田伸三君も、そうだ。
ルパン三世のテレビスペシャルを彼、ヨネ(米村正二)と自分の3人で書いた時、ここに籠もっていた。
藤田君とヨネを地下に押し込み、
「書き上がるまで出てくるな!」
と、エラソーな事を言っていたのだが、今や藤田君はアニメ界では5本の指に入るライターになってしまったし、ヨネはアカデミー賞(勿論、アメリカのだぜ)の短編アニメ部門にノミネートされる脚本家になってしまった。
ここでは藤田君、ヨネなんて書いているが、2人と会えば、
「藤田さん、元気そうでなによりです。あ、米村先生! 作品拝見しています。凄く勉強になります」
などと、敬語を使って話しているのだ。