2008年9月2日(火曜日)
午後からの打ち合わせの前に映画を観ることにする。
なにを観ようかと考える。
ブログに書くことを考えれば、どうせなら何かそれっぽい映画のほうがいいかとつい余計なことを考える。どうせなら「おぉ、それを観るのか!」と思わずポンと膝を打たれるような映画がいい。『ポニョ』じゃ普通すぎるか。『セックス・アンド・ザ・シティ』じゃベタか。『片腕マシンガール』じゃ狙いすぎか。
てゆーかレイトショーでしかやってないし。『デトロイトメタルシティ』だとなんかミーハーっぽいか…。とかいろいろグダグダと考えなくてもいいことをついつい考える。
以前、友達と神楽坂にあるバーに行ったときのこと。
たしか有名な本書き旅館のあるあたりだったか。石畳の路地にひっそりとある「モダンの中に和をとりいれました」的デザイナーズっぽい外観の、めっちゃカッコイイ小さなバー。いかにも敷居が高そうで、ひとりじゃ怖くてとても入れない。デートでも逆に狙い過ぎているようで入るのが恥ずかしい。そこに、酔った勢いで男友達と入った。
カウンター席のみの店内。カウンターの中には渋いバーテンダー。客は他に、高そうなスーツを着た業界人っぽい二人組と、なんかオトナな感じの落ち着いたカップル。そんな中、すでに一軒目の居酒屋ででき上がってる思いっきり普段着の赤ら顔の男二人は明らかに浮いている。でも、とりあえずカウンターに座り、「山崎をロックで」とかいってみる。
そのバーには小さなプロジェクターが置いてあった。
そのときは何もかかっていなかったが、たぶんBGVとして映画を流したりすることもあるのだろう。こういうのは、どんな映画が置いてあるかでその店のセンスが問われる。『レオン』じゃ普通すぎる。キューブリックもある意味ベタだ。
ジム・ジャームッシュじゃすかしすぎか。カリウスマキじゃ狙いすぎか。
ここはやはり無難にコーエン兄弟とか? いや、いっそアメリカンニューシネマあたりがカッコイイか…。とかいろいろ考えつつ、プレイヤーの横に積まれたDVDのジャケットの背を見てみると――
『鬼平犯科帳』と『酔拳2』が置いてあった。
たいへん意表をつかれた。
この場所、この雰囲気のバーで、『鬼平犯科帳』と『酔拳2』。
とくに『酔拳2』。
数あるジャッキー・チェンの映画の中でもあえて『酔拳』。しかも、『2』。
同じジャッキー映画なら、『プロジェクトA』あたりがまだ無難だと思うのだが、そこをあえて『酔拳2』。なんという絶妙なセレクション。カッコイイ。
――と、思うのは自分だけかもしれないけど。
デートで来たカップルとかにしてみれば、いい雰囲気で入った店で『鬼平犯科帳』がかかってたりしたらムードぶち壊しかもしれないけど。
でもマジでかっこよかった。こういう店はきっと信用できる。
というようなことをダラダラと考えつつ、結局、自分は無難な選択。
『ハンコック』を観た。
同じヒーロー物という括りでは、『ダークナイト』もよかったけど、こっちもたいへん面白かったです。
映画館を出ると、プロデューサーからの着信。
午後の打ち合わせが中止になったという連絡。
急にポッカリ時間があくと嬉しい。
もう一本、何か観ていこうかと思ったけど、自重して、部屋に戻って原稿書き。
地味な一日でした。
2008年9月3日(水曜日)
ひょんなことから親しくなった漫画家さんがいる。
まだ若い、ちょっとイケメンの漫画家さんだ。
夜、その漫画家さんと新宿の居酒屋で飲む。
僕の似顔絵を描いてくれると彼は言うので、プロフィールの写真がわりに使ってもいいかと聞くと、「いいけど版権が発生するよ」と言われる。
ちょっとムッとしつつも、まあしかたがないかと思う。
その場で似顔絵を描いてもらっていると、元モーニング娘の加護ちゃんがやってきた。どうやら彼とつきあってるらしい。彼は都内から電車で2時間くらいかかるところに住んでいるので、あまり遅くまでは飲めない。加護ちゃんは彼の電車の時間を心配しながらもひとりワインをがばがばと飲んでいる。
気がつけば、携帯に20件のメールが入ってる。見れば、彼のファンからの嫌がらせのメール。僕が彼と親しくしていることが気に入らないらしい。
いったいどうやって僕のメールアドレスを調べたのかと思いつつ、でも、そういう嫌がらせならば僕よりも加護ちゃんの方に向けられてしかるべきではないか?
嫉妬の矛先が加護ちゃんではなく僕に向けられるのはちょっと違うのではないか? とか考えている間にもどんどん嫌がらせメールが入ってくる。
加護ちゃんはへらへらとワインを飲み続けている。
という夢を見た。
夢日記を書き続けると気が狂うという話を聞いたことがある。
昔、ジャンプで連載をしていた漫画家さんがこれをやって気が狂ったと。
都市伝説の類いだろうか?
夢とは本来見てすぐに忘れるものであり、それを書き記し記憶に強くとどめるということは精神衛生上よくない、というような理屈を何かで読んだ気もするけど、まあ一日くらいならばよいか。と、夢日記でお茶を濁しつつ。
今日は午後から打ち合わせ。
NHK教育の『おじゃる丸』という番組。
10分間の幼児向けアニメだけれど、シュールな話あり、ちょっと大人向けの話あり、ものすごいバカ話から、ホロリとくる話まで、かなり自由にいろんな話が書けるのでとても楽しい。
僕の書いた話ではないのだけれど、「アリらとおじゃグマ」というエピソードがある。アリとキリギリスを下敷きにした話で、夏のあいだ遊びほうけていたおじゃグマが、冬になって食べ物がなくなると、アリらの家に押し入って、泣き落としやら何やらあの手この手で無理矢理居座り、結局、夏も冬もぬくぬくと暮らしました。めでたし。というようなお話。放映されたときは結構クレームの電話なども来たらしいが、自分はこのお話が大好きだ。
ピタゴラスイッチなんかもそうだけど、NHK教育の子供番組はあなどれない。
見たことない人は是非一度見てみて下さい。
2008年9月4日(木曜日)
午後からの打ち合わせの原稿を昼過ぎにギリギリにあげてメールで送る。
本当は余裕をもって前日に送らなければならないのだけれど、なかなか書けないまま当日になってしまうことも多い。申し訳ないと思いつつ。
打ち合わせに出かける前に、パンツを履き替える。
今日は初稿の打ち合わせなので、初稿パンツを履く。
デートのときの勝負パンツというのがあるれけど、自分の場合、初稿の打ち合わせのときに履く初稿パンツというのがある。別に打ち合わせの席で脱ぐわけではなく。まあ、ジンクスというか、ゲンカツギというか。そのパンツを履いていったときは打ち合わせがスムースにいき、直しも少ないというパンツだ。
今週は、月曜日の打ち合わせも初稿パンツだった。
初稿の打ち合わせが続くときは、こまめに洗濯をしておかねばならない。
一応、予備の初稿パンツもあるのだが、そっちはあくまで予備なので、真・初稿パンツよりも少し威力(?)が劣る。なのである程度「この初稿はいける」という自信があるときでないと履いていきたくない。
初稿の打ち合わせが続き、洗濯が間に合わないときは、やむなくこの2枚のパンツのローテーションとなる。どっちの打ち合わせにどっちの初稿パンツを履いていくか? 洗濯はどのタイミングでするか? ローテーションを考えるのは結構、大変だ。てゆーか、そんなことに頭を悩ましてるヒマがあったら、さっさと原稿書けよという話もあるのだが。とにかくまあ、いまだそのくらい初稿の打ち合わせは緊張するものだということで。
パンツの話はさておき。
今日の打ち合わせは、『ケロロ軍曹』というアニメ作品。
もう5年続いてる作品で、参加しているライターさんの人数も多い。
自分のも含め、各ライターさんの書いてきたシナリオやプロットが順番に俎上にのせられていく。直しが必要な場合は、監督を中心に皆で「あーでもないこーでもない」とアイデアを出し合う。途中から話がそれて完全に雑談、ただのバカ話になってしまうことも多い。でも、そんな中から面白いアイデアがポコッ
と生まれることもまた多く。
終わったのは9時過ぎ。
新宿のスープストックで遅い晩飯を食べて帰る。
カロリー控えめ。メタボ対策。
2008年9月5日(金曜日)
鍼をうってもらいに熱海の温泉宿に来ている。
鍼灸師の予約の時間まで散歩でもしようと宿を出た途端、狙撃された。
という夢を見ました。すみません。またです。
今日は定例の打ち合わせが休みで、一日、部屋で原稿書いたりダラダラしたり。
なのであまり書くことがない。
明後日の日曜は、毎年恒例となっている『ケロロ軍曹』の慰安旅行がある。
行き先は、某温泉。
熱海ではないけれど、正夢になったらどうしよう。
いや、狙撃はありえないか。
2008年9月6日(土曜日)
朝、仕事場からいったん横浜にある自宅へ帰る。
諸々の用事を済ませ、午後にはまた仕事場に戻る。
去年の春から都内に狭いワンルームを仕事場として借りている。
テレビも本も漫画も高速ネット環境も、余計なものはいっさい置かない部屋ならば、きっと仕事もバリバリはかどるに違いないと思ったのだ。
でもまあ結局、仕事場だろうが自宅だろうが、スタバだろうがデニーズだろうが、書けるときは書けるし、書けないときは書けない、はかどるときははかどるし、はかどらないときははかどらない、という当たり前のことがわかっただけだった。
というわけで書けないときは本当に書けない。
明日の慰安旅行までにあげていかねばならない原稿があるのだけど、無事あがるのかどうか。
2008年9月7日(日曜日)
午後3時過ぎ。
結局、原稿は間に合わないまま、ノートPCを持って部屋を出る。
『ケロロ軍曹』の慰安旅行。東武特急に乗って鬼怒川温泉へ。
特急車内で原稿を。
午後6時過ぎに旅館に到着。
貸し切りバスで来た人たちはすでに到着していて、ちょうど大広間での宴会が始まるところだった。
飲み食いしながら舞台では大抽選会。
商品券やらiPodやらガンプラやらDVDやらが次々と当たる。
でも、自分は何も当たらない。
監督や他のライター陣、主要スタッフはみんな当たっているというのに。
参加人数80名ほど。そのうち20名にはなにがしか当たるというのに。
「こんなところで運を使いたくないから」
と、負け惜しみを言ってみても、結局、当たる人というのはいつでもどこでも何かを当て、そして、そこで運を使い切ってるかというと全然そんなことはなく、他のところでもやっぱり何をやっても運がいいものなのだ。
そういう人に自分はなりたい。
というわけで一週間、実のない話ばかりですみません。
次回からは、山田耕大さんです。
山田さんには、映画『クロスファイア』でお世話になりました。
『クロスファイア』のシナリオは準備稿作りから参加しました。5稿か6稿くらいまで書いたのですが、結局、自分の力だけでは決定稿にはできず、山田さんにバトンを渡す形となりました。
あのときは本当にありがとうございました。